絵を描くよりも本を読むほうがずっと好きだった子どもが、なぜ文章ではなく、美術の道に進んだのか。福田尚代さんの経歴をみたとき、いちばんの謎はそこでしたが、福田さん曰く、「まったく考えもしなかった問いです」。 大学がつづいている高校でそのまま進学するのが嫌で、美術学校に行こうと思ったのが絵をはじめた動機でした。つまり進路が先で絵は後から付いてきたのですが、描きだすと夢中になり、しかもその何に惹かれたかに彼女らしい理由があって、目の前にあるものを何時間でも見つめていられることがうれしかったと言います。もし日常生活でやったら頭がオカシイと疑われかもしれないことを、絵が理由ならば堂々とできたわけで、見つづけるうちに日常とはちがうように見えてきて、いままで見ていたものはなんだったのかと疑問に思うほどに。東京藝大の受験がその年は珍しいことに自由課題で、偶然見かけた石を描いて見事に合格。 とはいえ、そこか