「とんでもない」の丁寧な形には、現在、「とんでもないことでございます」「とんでもございません」の2種類があります。 このうち、後者の「とんでもございません」は、以前から、不当な理由で「誤用」と言われることの多かった形です。作家・評論家などの中でも、特にことばに細かい人々が「誤用」と言い続けたため、その説に従う人が多くなり、「とんでもございません」が使いにくくなった時期がありました。 でも、「とんでもない」の歴史を考えれば、「とんでもございません」は、決して誤用とは言えません。その理由をまとめておきます。 「とんでもない」は、すでに16世紀からあることばです。一方、「とんでもありません(ございません)」の形が観察される資料は、今のところ、1920年代以降のものです。たとえば、宮沢賢治「月夜のけだもの」(1921年)に〈ご馳走(ちそう)なんてとんでもありません〉と出てきます。新しい形なのは確か