昨年、ケリー・ライカート監督の作品が、わたしの心の片隅にずっと存在していた。 2020年のイメージフォーラム・フェスティバルで上映されて以来、波紋が広がり続け、様々な映画館を漂うように上映され続けていた。今回、ここ早稲田松竹に漂着し、上映できることがとても嬉しい。 『リバー・オブ・グラス』をわたしは2回鑑賞した。1回目に観た時にとても興奮した覚えがあり、一体わたしは何に興奮したのかを確認するためにもう一度観た。カットとカットのつながりに使われる音楽が、拳銃を失くしてしまった刑事の叩くドラムの音であること、主人公のコージーにはこれといって何かやりたそうなことが見えないのに器械体操がとても得意なことなど、映画の端々にある重要でなさそうな一つ一つがとても丁寧に描かれている。映画として重要ではないかもしれない登場人物たちの動きや仕草や設定が、怠惰な日常を、より鮮明にしている瞬間瞬間に心を動かされた