<カンヌ映画祭で最高賞を受賞。「セックスワークを正確に描いた」と称賛されているが、元ストリッパーの私から見れば、他の「がっかり娼婦映画」と変わらない部分も──(レビュー)> 私は元ストリッパー。しばらく前にロサンゼルスのビバリーヒルズで、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたショーン・ベイカー監督作『アノーラ(Anora)』の試写を見た。 ヒロインのアノーラ(通称「アニー」)は私の同業者だが、試写室を埋めた評論家やジャーナリストに同業者はいそうもない。ぞっとした。 この作品、世間では「セックスワークを正確に描いた」と絶賛されているが、本当にそうだろうか。セックスワーカーを主役にした映画をセックスワーカーが見てがっかりするのは、残念ながら今に始まった話ではない。 この手の映画の結末は大抵決まっている。ヒロインが晴れてセックス産業から抜け出すハッピーエンドか、そのまま商売を続けて
