記事:晶文社 『母を失うこと 大西洋奴隷航路をたどる旅』(サイディヤ・ハートマン著、榎本空訳)。現代ブラック・スタディーズの古典的作品にして、紀行文学の傑作 書籍情報はこちら 世界のあり方が一変してしまう本 大西洋なら一度だけ近くで見たことがある。ノースカロライナに住んでいた頃、車を三時間ほど走らせて、サウスカロライナのビーチに家族で行った。次女の一歳の誕生日に合わせたから、二〇二一年の初夏だったと思う。友人家族が出不精なわたしたちを連れ出してくれた。海岸沿いにそびえるリゾートホテルをいくつも通り過ぎれば、大西洋が開けている。砂浜を埋める多様な肌の色をした人々、その隙間に花が咲いたように突っ立ったパラソル、子どもたちの歓声、不意の強風に吹き飛ばされたビーチボール、緑がかった海に波の白、空の青。それはどこからどう眺めてみても観光地の平凡な光景に違いなく、わたしもまた、その中の紛れもないひとり
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