「クマのプーさん」が政治的にあまりに微妙な存在となってしまい、中国のソーシャル・メディアで一切禁止されるという事態が起きている。 7月15~16日の週末にかけて、中国版ツイッターと言われる新浪微博(ウェイボ)で、「クマのプーさん」の中国名を含む投稿が検閲により読めなくなった。中国の対話アプリ、微信(ウィーチャット)からも「プーさん」のアニメ画像が一掃された。 中国政府による公式の説明は一切ない。だが、英国の児童文学作家A・A・ミルン氏(1882~1956年)の代表作である「クマのプーさん」が、習近平国家主席に似ているという指摘が以前から広まっており、中国のネットに詳しい関係者によると、今回の「クマのプーさん」の禁止は、その事態に対応したものだとみられている。 中国当局は、新たな指導部のメンバーが発表される中国共産党大会の開催を秋に控え、ネット検閲を強化しており、その一環というわけだ。
「ロシアの検事総長(注*1)が、ヒラリーとロシアの間の取引について、彼女にとって不利になるような公式の文書や情報をトランプ陣営に提供したいと申し出ています。あなたの父親にとって非常に有益な内容です。言うまでもなく高官レベルの機密情報ですが、ロシアとその政府からのトランプ氏に対する支援の一環だそうです」 2016年6月3日、米大統領選中のドナルド・トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏に宛てたメールでこう書いたのは、英タブロイド紙の記者からフリーの渉外担当に転じた英国人ロブ・ゴールドストーン氏だ。トランプ・ジュニア氏とは、かつてトランプ家が主催していたイベント「ミス・ユニバース大会」で知り合ったという。 注*1 原文は「The Crown prosecutor」とあり、通常は英国の検事を指す。国王がいないロシアにはこの肩書きは存在しないが、ロシアの検事総長を指していると思われると米ニ
病気療養の休みの間、海外はもちろん国内もあまり遠出らしい遠出をしませんでした。 唯一といっていい例外が9月初旬の平日にクルマで出かけた箱根芦ノ湖です。特に目的もなく行ったのですが、偶然クルマをとめた駐車場の隣が玉村豊男ライフアートミュージアムだったので、入場券を買って鑑賞させてもらいました。思いのほか楽しく玉村さんの水彩画や版画を見てまわりました。 帰宅後に、休み中はほぼ毎日通っていた近所の図書館からエッセイストである玉村さんの著書を数冊借りて、さっそく読みました。若き日に過ごしたフランスでの日々や、現在の軽井沢の暮らしなど、さまざまなことが綴られたエッセイの中のひとつに、サントリーの金麦のCMに関する文章がありました。
テリーザ・メイ英首相は6月8日の総選挙で、「強力」かつ「安定」した政権の樹立を約束したはずだった。だが、こんなに事態が深刻でなかったら、笑いたいくらいメイ首相が約束したことと真逆なことが起きた。 ドナルド・トランプ米大統領は、「米国は世界の嘲笑の的になっている」との思いに駆られているようだが、英国こそがまさにお笑い草そのものだ。デービッド・キャメロン前首相は、EU(欧州連合)離脱を巡り全く不必要な国民投票を実施し、その後を継いだメイ氏は、支持基盤を強化するどころか自らぶち壊した。世界の目には、英国はまるで無茶苦茶をやっているように見えるだろう。 また、メイ氏はEU離脱交渉について「悪い合意を結ぶくらいなら、何の合意もない方がましだ」と言っていたが、この選挙の結果で、「何の合意もなし」という事態に陥る可能性は高くなった。これは英国にとってもEUにとっても悲惨な事態を意味する。 皮肉なのは、総
権力の中枢である米ワシントンは、決して平穏な場所ではない。中世の時代に農民などの庶民が騎士たちの一騎打ちを楽しんで見物したように、現代も政界という名の「村」における権力者たちの対立をロビイストやコンサルタント、嫌われ者のジャーナリストたちは注視している。過去も今も彼らが目にしたがっているのは、権力者が対立相手を泥の中に叩き落とす様子だ。 それだけに米国の首都でトランプ大統領の側近がこれだけ対立しているというのは、興奮せざるを得ない。ここ何週間もスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問とジャレッド・クシュナー大統領上級顧問という2人の権力者が、報道陣へのリークやブリーフィングを通してつばぜり合いを繰り返している。 観衆にとって面白いのはクシュナー氏が大統領の娘婿という点だ。少年っぽさを残すハンサムな彼は、米不動産王の最有力の跡取り候補であり、かつ民主党への大口献金者としても知られ、トランプ氏
欧州経済共同体(EEC)を生んだ1957年のローマ条約が重要な意味を持つのは、調印の時点でさえ、当時の西ドイツとフランスの考えにはズレがあったという事実ゆえである。 西ドイツは当時、共同市場の創設を求めて調印したが、フランスは同時に設立された欧州原子力共同体(ユーラトム)の立ち上げに熱心だった。西ドイツ政府は工業製品への関税の撤廃を強く求め、フランス政府は自国農民の収入を何としても守ろうとした。 こうした食い違いに対して独仏両国が歩み寄りの精神を発揮し、違いを脇に置く意思を共有できたことこそが、その後の欧州統合に向けた動きの強みとなった。「欧州連合(EU)においては、常に欧州大陸の二大国による利害と見通しの緊密な一致がみられる」という神話が特に英国では浸透している。この神話は「独仏機関車」と呼ばれたけん引力が成果を上げてきたことの証左でもある。 衝突を繰り返してきたドイツとフランス だが、
フランス大統領候補の中で欧州統一に最も積極的な人物が2月下旬、ロンドンで演説し、熱狂的な歓迎を受けた。 エマニュエル・マクロン氏は39歳。社会党政権で、経済産業デジタル相を務めた経験を持つ。陽気で国際感覚に富み、技術にも詳しい。まさにロンドン暮らしのフランス人が敬愛するタイプの人物だ。同氏は、外国に住むフランス人の票を集めようとロンドンに降り立った。 マクロン氏は今回、無所属で立候補し、右派か左派かを問わず有権者全体に働きかける。まったく無名の候補だったが、今では世論調査で支持率2位に肩を並べる。だが仏大統領の座が近づくほど、同氏の選挙活動は厳しさを増している。 ロンドンを訪れる数日前、マクロン氏は同氏に対して敵対的な土地柄の場所にいた。軍港を擁す地中海の町、トゥーロン。伝統的に右派が優勢な地域だ。 マクロン氏が開催した集会の入り口は、激高する多数の国民戦線(FN) * 支持者とピエ・ノワ
スティーブン・ムニューチン氏を次期財務長官に起用するのは、ある面では典型的な人事だ。過去7人の前任者のうちの2人と同様――そして同氏の父親と兄弟とも同じく――ムニューチン氏は米金融大手ゴールドマン・サックスで幹部にまで上り詰めた経歴を持つ。 2000年代には一時、著名投資家のジョージ・ソロス氏の下で働いたこともある(ドナルド・トランプ氏は選挙前、ソロス氏とロイド・ブランクファイン氏を「グローバル権力構造」の中枢として、攻撃の標的にしていた。ブランクファイン氏は現在、ゴールドマンの最高経営責任者=CEO=を務める)。財務長官指名の報道を受けて、ムニューチン氏はビジネス専門ニュース局のCNBCで、税制改革の必要性について真摯に語った。 金融業から映画制作へ だが、別の面に目を向けると、ムニューチン氏の指名はむしろユニークと言える。同氏は近年、映画制作会社を設立し、活躍の場を金融から映画に移して
英国のEU離脱、欧州での右派政党の躍進、米国大統領選挙の混迷――。世界的に反移民、反グローバル化が台頭する中、カナダだけが移民を大量に受け入れ続け、自由貿易を支持している。 現在の西欧社会で、「他者を受け入れる心」の松明を掲げられるのは誰だろう。米国の次期大統領ではあるまい。現状に不満を抱く層を煽る共和党候補ドナルド・トランプ氏が大統領になれば、メキシコ国境に壁ができ、貿易協定を破棄することだろう。一方、民主党候補のヒラリー・クリントン氏(11月8日に勝者となるのは恐らくこちらだ)は、移民についてはずっとましな政策を採るだろうが、野心的な貿易協定についてはかつての支持を撤回している。 移民とグローバル化への懸念から、英国は国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を選択した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は難民に門戸を開いた結果、相次ぐ政治的敗北を喫している。フランスでは、来年の大統領選挙の第1
だがそんなことはあり得ない。残留派が勝利すれば、英国は2分された状態が続くだろう。離脱派は苦い感情を抱え、政治生命の危機に立たされよう。 一方、最近の世論調査が示す通りに離脱派が勝利すれば、経済の混乱と政争が待ち受けている。主権を取り戻すと訴えてきたはずなのに、英国は経済動向と、自らが撥ね付けたEUの加盟国に、依然として命運を握られているからだ。今では離脱派もこのことを理解している。 英国のデービッド・キャメロン首相は、投票で離脱が決まれば、リスボン条約50条を直ちに発動すると述べている。この条項は、EUから離脱するための手続きを定めている。英国とEUが離脱交渉をまとめるための期限は2年間だ。延長は可能だが、それには加盟国全ての賛成が必要である。 期限内に合意に至らなければ、英国は世界貿易機関(WTO)が定めた規則の下でEUとの貿易を行う以外に道がなくなる。このことは、EUとの貿易に関税が
「香港にはなぜ民主主義が存在しないのか。それは、そのために命を落とした人間がまだいないからだ」――。かつて英国領だったこの地に住むある学生は、自由を勝ち取ることには人々が血を流すだけの値打ちがあると考えている。例えば、中国からの独立を求め、市街地で急進派が暴れ回る。英国領事館の前で1人の市民が抗議して命を絶つ。そうした抵抗を鎮圧すべく北京政府が戦車を送り込む…。 こんな悲惨な出来事がこの2016年に起こるとは思えない。だが今後10年の間ならどうだろう。こうした事態が香港で起こる可能性はあるのか。香港映画『十年』は、こんな疑問を投げかけている。地元で大ヒットし、中国当局を激怒させている作品だ。 1997年に香港が英国から返還されたとき、中国は、香港に「高度な自治権」を向こう50年間にわたって与えることに同意した。『十年』は5つの短編で構成されている。どのストーリーも50年を待たずして中国が香
「在什么地方可以直接提取日元」 (どこに行けば日本円が手に入りますか?) 今年2月中旬、中華圏の正月に当たる春節の時期、JR山手線をはじめとする都内の主要路線に、外国語表記の広告が掲載されて話題を集めた。英語版もあるものの、目立ったのが中国語版だ。 仕掛けたのはセブン銀行。自社のATM(現金自動預け払い機)が海外で発行したカードにも対応していることをPRするため、中国人観光客が数多く訪れる春節に、空港や駅、電車内など外国人が集まる場所に掲載した。 訪日外国人客の間で、日本は現金を手に入れられる場所が少ない国として認知されている。2002年に開かれたサッカーのワールドカップの際、多くの外国人が日本円をATMで引き出そうとしたができなかった。それを機に、話が一気に広まったという経緯がある。 なぜ日本の多くのATMは、海外発行カードに対応していないのか。それはカードの構造自体が違うからだ。 日本
このところ、米国の宇宙ベンチャーの動きがものすごく活発だ。11月23日、ネット流通大手のアマゾンのジェフ・ べゾスCEOが設立した宇宙ベンチャーのブルー・オリジンは、テキサス州の私有地で、同社の開発した有人弾道ロケット「ニュー・シェパード」の2度目の無人打ち上げを実施し、ロケット部分の垂直着陸を成功させた。イーロン・マスク率いるスペースXも負けじと12月22日、「ファルコン9R」ロケットの打ち上げで、使い終えた第1段を打ち上げ地のケープカナヴェラルに戻して垂直着陸させることに成功した。 ニュー・シェパードの有人カプセルは、慣例的に「ここから宇宙」とされる高度100kmを越えて100.5kmに到達し、その後パラシュートを開いて無事に着地。さらに、ブルー・シェパードのロケット部分は切り離し後に、姿勢を制御しつつ降下し、最後に着陸脚を展開してロケットエンジンを再起動して逆噴射を行い、着陸に成功し
東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった。 これまで東芝は、原子力事業については一貫して「順調」だと説明し、WHの売上高や利益、資産状況については明らかにしてこなかった。5月に発足した第三者委員会もWHの減損問題については踏み込んでいない。 本誌(日経ビジネス)が独自に入手した内部資料によると、WHの実情は東芝の説明とは大きく乖離している。経営陣の電子メールなどを基に、東芝とWHが抱える“秘密”を明らかにしていく。
たった1カ月で事態がここまで様変わりするとは。9月4日夜、アンゲラ・メルケル独首相は10年前に就任して以来、最も劇的な判断を下した。欧州の難民規則を停止し、ハンガリーで足止めを食っている数万人の難民に対し、オーストリア経由でドイツに入国することを許可したのだ。この人道的な行動は、当時のセンチメントに適うものだった。本誌(エコノミスト誌)が印刷に回された時点では、メルケル首相はノーベル平和賞の候補に上がっていた。 しかしながら今、利他主義に基づいたメルケル首相のこの判断は、ドイツ国内で激しい批判を引き起こしている。これまで鉄壁と思われた同首相の人気に陰りが生じかねない雲行きだ。同首相はいつになく使命感を前面に出し、難民の権利に「上限は設けない」と繰り返した。これに対しヨアヒム・ガウク大統領 は「どの程度が上限なのかまだ検討していないが、難民受入れ能力には限界がある」と牽制した。同大統領は通常
今年もノーベル賞の季節が終わった。今年は医学・生理学賞に大村智氏、物理学賞に梶田隆章氏と二日続けて日本人受賞者が出たので、日本中が祝賀ムードで沸いた。彼らの業績を一般庶民の私たちがものすごく深く理解しているわけではないのだが、純粋に同じ日本人の受賞がうれしい。これは当然の人間心理だと思っている。 なので屠呦呦氏が中華人民共和国民として初の自然科学分野のノーベル賞、ノーベル医学・生理学賞を受賞したことに、中国人はさぞ大喜びをしていると思っていた。確かに最初の第一声は、歓声であった。だが、それに続く報道や世論がどうも微妙だ。純粋に喜び、祝福する声だけでないのである。それどころか、疑惑とか議論とネガティブな報道も多い。これはどうしたわけだろうか。 切望かなった自然科学分野の受賞 屠氏は、ノーベル平和賞の劉暁波、ノーベル文学賞の莫言両氏に続く中華人民共和国3人目の受賞者。中国人民が切望していた自然
久米 泰介 翻訳家 1986年、愛知県生まれ。関西大学社会学部卒、ウィスコンシンスタウト大学人間発達家族学MS(修士)取得。専門は社会心理学、男性のジェンダー、父親の育児。翻訳書にワレン・ファレル著『男性権力の神話』 この著者の記事を見る
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