「あまりにも早い時期に競技に熟達した人間を相手にするのは非常に難しい。そうした人は新たなことに挑戦しないし、モチベーションを維持するのが困難だ」 スティーブン・フランシス(ジャマイカの陸上コーチ) サッカーの育成関係者であれば、必ず読むべき本がある。デンマーク出身のラスムス・アンカーセンが記した『トップアスリート量産地に学ぶ 最高の人材を見出す技術』(清水由貴子・磯川典子訳、CCCメディアハウス)だ。 元サッカー選手のアンカーセンが「才能」に興味を持ったのは、デンマークのFCミッティランのアカデミーで働いていたときのことだ。スカウトが誰も目をつけなかったシモン・ケアー(当時15歳)が他の誰よりも成長し、DFとしてパレルモ、ヴォルフスブルク、ローマとステップアップしたからだ。 ケアーはアカデミーの枠が余ったから人数合わせで入ったにすぎず、もし他の有望選手が断っていなければ見過ごされていた人材