しばらく前に、初対面の先輩技術者とDB設計について話していたときのことだ。彼が書いた「データモデル」を見せてもらったのだが、そこには主キーが示されていなかった。不思議に思って尋ねると、「主キーを何にするかは実装上の問題なので、示してありません」という答だった。 これには驚いた。「鉄筋の本数は施工上の問題なので、設計図には示してありません」と言われたようなものだ。主キーはシステムが扱うデータの論理構造を表すために不可欠なもので、それが示されていないデータモデルはセンチメンタルな「ポエム」でしかない。 そういうものにもとづいて高層ビルを建設すれば施工中に倒壊して、設計図がポエムでしかなかったことが明らかになる。ところがシステム開発の場合、現場が苦労に苦労を重ねるとまがりなりにも出来上がってしまうので始末が悪い。設計者は自分のやり方を是正することなく、いつまでも彼の文学作品をデータモデルとして世