『楡家の人びと』(にれけのひとびと)は、北杜夫作の長編小説。雑誌『新潮』に1962年(昭和37年)1月 - 12月にかけて第1部が、1963年(昭和38年)9月 - 1964年(昭和39年)3月にかけて第2部「残された人々」がそれぞれ連載、書き下ろしの第3部を加えて、1964年4月『楡家の人びと』として新潮社より出版された。作者が尊敬するドイツの小説家トーマス・マンの長編『ブッデンブローク家の人々』の影響を受け、自身の家族をモデルに、大正・昭和戦前期にわたる精神科医一家を描いている。 大正初め、東京青山に西洋の御殿のような精神病院「帝国脳病院」が聳えていた。そこを舞台に、院長の楡基一郎、その妻ひさ、勝気な長女龍子、学究肌の夫徹吉、などの一家とそれを取り巻く人々が織りなす人間模様。初め、虚栄に満ちた華やかな生活を送る楡家の一族であったが、基一郎の議員落選、二女聖子の出奔が続き、震災直後の病院