八紘一宇はなぜ悪いのか 関東軍の印章には「八紘一宇」と刻まれていた。戦前・戦時中の戦意高揚アジには、「八紘一宇の大理想」というスローガンが常に繰り返されていた。 日本書紀の一節から作られた言葉だが、歴史は浅く、大正時代の作である。作者・田中智学は新興宗教の教祖で、信者のなかに石原莞爾がいた。この巡り合わせがもしなかったら、八紘一宇という言葉が軍部に注目されることもなく、違う言葉がスローガンに選ばれていただろう。 八紘一宇を国家的スローガンに押し上げたのは石原莞爾とそのエピゴーネンであり、この連中が「日本のためによかれと思って」やらかした数々の独善が戦前日本を滅ぼした。その経緯を思えば、わざわざ内容を検討するまでもなく、屑として歴史のくずかごに叩き込まれるのも当然だろう。 だが、内容の検討がされなかったせいか、「八紘一宇の大理想そのものは正しい」と言いたがる人々がいる。「考えている」や「思っ