こんな話がございます。 江戸麹町に中田屋ト申す店がございまして。 そこに、伝蔵ト申す篤実者の奉公人がございました。 真面目な男ですので、主人も非常に目にかけて、かわいがっておりましたが。 篤実者だからト、色気がないかト申せば、そんなことはございません。 いつしか、主人の娘、おみつと深い仲になってしまった。 しかも間の悪いことには、おみつがやがて伝蔵の胤を宿してしまいまして。 追い詰められた二人は、以前奉公していた吉兵衛という男を頼っていく。 吉兵衛から見れば無分別な二人ではございますが。 そこは旧主の娘御とその情人でございますから。 二人の代わりに、中田屋の主人に詫びを入れに行ってやりました。 ところが、父親は事態のゆゆしきことを知って、すでに激怒している。 「七度転生しようと、もう親子ではない。二度と帰参は許さぬ」 ト、まるで取り付く島もない。 ところが、母親の方は、これはやはり大事な娘
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