こんな話がございます。 奥州のとある山奥の村に、三本枝と呼ばれる竹やぶがあるそうで。 そこに狐が一匹住んでおりまして、よく村人たちを化かします。 ト、それが普通の化かし方ではございません。 この狐のために命を落としたものもあるほどで。 村人たちは「三本枝の狐」と呼んで、心底恐れておりました。 「日が暮れてからは決して三本枝に近づいてはならねえぞ」 ト、互いに戒めあうのが、もはや村人同士の挨拶でございます。 さて、ここに、名を彦兵衛と申す若い衆が一人おりまして。 これは村のうちでも、飛び抜けて肝の太いことが自慢の大男。 大の大人が寄り集まって、狐一匹を恐れていることが、焦れったくてたまらない。 その日も、業を煮やしたように立ち上がると、集まった村人たちを叱咤した。 「馬鹿馬鹿しい。狐なんぞに化かされて、おめおめと泣き寝入りするつもりか。あんなものは、こっちから出向いて、痛い目に遭わせてやれば
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