こんな話がございます。 有名な小栗判官(おぐりほうがん)の蘇生譚でございます。 時は足利将軍の時代。 二条大納言兼家卿の嫡子、後の小栗判官は、毘沙門天の申し子と呼ばれておりました。 どういうことかト申しますト。 子に恵まれない兼家卿が、鞍馬の毘沙門天に祈願して授かったのが、小栗判官でございます。 判官は七歳の時に勉学のために比叡山へ送られまして。 十八歳の時には、東山第一と呼ばれるほどの秀才に成長いたしました。 そこで、父君に呼び戻されまして、官位と屋敷を授かりました。 さて、父君は館の主となった小栗に御台(みだい)を迎えてやろうと考えまして。 さまざまな家柄の姫を会わせますが、小栗は全く興味を示さない。 「背が高すぎる、髪が長すぎる、顔が赤すぎる」 ト、もったいない御仁があったもので。 なんと、七十二人の姫にあれこれ難癖をつけて、送り返してしまいました。 それだけでも父君の面目は潰された