[自然倍音列和音とその変位] 前回、スクリャービンが愛した基本的和音は 「自然倍音列をテンションに持つ属和音」 だと書いた。 もう一度それを示そう: 譜例1 これは「11度を上方変位した属13の和音」 であるが、 譜例1からわかる通り、 ○印をしていないものも含め第14倍音までこの和音に含まれる。 簡単のため以後これを「自然倍音列和音」と呼ぶことにしよう。 (余計なことであるが第9、11、13倍音が基音からそれぞれ9度、11度、13度となっているのは単なる偶然である。) さて、 譜例1で9度(すなわちDの音)を上方あるいは下方に変位した和音を考えてみよう。 譜例2 譜例3 C13+11+9 C13+11-9 これらは普通の音楽にはあまり出てこない和音であるし、 完全4度の音程を含む(譜例2ではB♭とD♯、譜例3ではD♭とF♯)ので、 通常は「3度の和音」の範疇で記述されることはない。 し