今、欧州で話題になっている論文がある。「 ハートウェル・ペーパー 」と言われるもので、国際交渉が行き詰まっている現在、新たな温暖化政策の方向性について論じている。このペーパーは、欧米の温暖化政策についての学者や産業人などの有識者14人による共著であり、リーダーはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのグウィン・プリンズ教授である。彼は、2007年にNature誌に「Time to Ditch Kyoto」(京都を捨て去るべき時)という論文を発表して、論争を巻き起こしたその人である。実は、筆者もプリンズ教授らとともに、昨年7月「How to Get Climate Policy Back on Course」(温暖化政策を本筋に戻すには)を発表した。同論文は、京都議定書型のトップダウンアプローチによる絶対量削減方式がなぜ失敗したか、そしてなぜ失敗せざるをえなかったかを説明し、脱炭素化を進める