福島第1原発の事故発生以来、一番腹立たしかったことは何か。研究者と話して意見が一致した。事故当初、放射性物質の拡散を予測する「SPEEDI」のデータを政府が非公開としたことだ▲放射性物質の雲は3月15~16日や20~22日ごろに北西方向や関東地方などに流れた。拡散を知らず雲が向かった地域に避難したり、子どもを外で遊ばせた人もいる。「予測さえ知っていれば」。そう思わずにいられない当事者の気持ちはいかばかりか▲追い打ちをかけるように炉心溶融の予測が放置されていたこともわかった。今ごろの公表に驚くが、「事実に基づくデータではないので活用に思い至らなかった」との釈明にもがく然とする。「事実」がわからないからこそ「予測」によって住民を守る。溶融予測も拡散予測もそのためのシステムではなかったのか▲大量の放射性物質の拡散から目を背けたツケは大きい。稲わらによる牛肉の汚染、今も続く新たなホットスポットの発