(英エコノミスト誌 2012年6月16日号) 北極の氷が解けて得られる利点もあるが、リスクの方がずっと大きい。 いま北極は夏を迎え、生命に満ちている。冷たい海では植物プランクトンが繁茂し、魚や鳥やクジラがそれをがつがつ食べている。無数の渡り鳥も北の繁殖地に戻ってきた。そして、北極は科学者で溢れかえっている。彼らはここで、新たに生まれた北極の儀式を執り行っているのだ。 この時期から、北極海を覆う海氷が最も小さくなる9月上旬まで、科学者たちは米国雪氷データセンター(NSIDC)が毎日発表する報告に没頭する。衛星から送られてくる今年のデータは、北極の氷が長期平均をはるかに下回る規模に縮んでいるのを明らかにするはずだ。 これは突然の異常ではない。1970年代以降、北極の海氷は10年ごとに約12%ずつ後退している。2011年は、夏の最小海氷面積が433万平方キロだった。1960年代の平均のほぼ半分だ