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ブックマーク / blog.livedoor.jp/yamasitayu (14)

  • 柏原宏紀『明治の技術官僚』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月10 柏原宏紀『明治の技術官僚』(中公新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 地味なタイトルのですがこれは面白いです。 副題は「日近代をつくった長州五傑」で、伊藤博文、井上馨、山尾庸三、井上勝、遠藤謹助の長州五傑(長州ファイブ)に焦点を当て、日の近代国家形成、技術官僚制の成り立ち、さらに政治における専門性を考えさせる内容となっています。 同じ明治期の官僚を扱った新書の名著に清水唯一朗『近代日の官僚』(中公新書)がありますが、あちらが官僚たちの「立身出世」の物語だったのに対して、コチラはある意味で、近代国家の確立とともに官僚機構から押し出されてしまった者の物語でもあります。 そして、その中で明治国家の頂点に立ったのが伊藤博文なのですが、その伊藤が数々の失敗にもかかわらず明治政府の中で重きをなしていったのかがわかる内容にもなっています。 目次は以下の通り。 序章 現代の技術官僚と長

  • 高安健将『議院内閣制』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月19 高安健将『議院内閣制』(中公新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 副題は「変貌する英国モデル」、議院内閣制の一つのお手とされるイギリスの議院内閣制に焦点をあて、そのメカニズムと近年になって噴出してきた問題点を分析しています。 イギリス政治の機能不全を分析したとしては、去年、近藤康史『分解するイギリス』(ちくま新書)という非常に面白いが出ましたが、あちらのが「なぜBrexitが起きたのか?」という問題を中心にイギリス政治全体の仕組みの変調を図式的に描き出したのに対して、こちらは議院内閣制という政治制度の分析にこだわって、日を含めて各国が採用している議院内閣制のこれからのあり方を検討する内容になっています。 『分解するイギリス』に比べると、やや専門的で読者を選ぶかもしれませんが、こちらも読み応えのある内容となっています。 目次は以下の通り。 第1章 議院内閣制とは何か 第

  • 関満博『日本の中小企業』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月6 関満博『日の中小企業』(中公新書) 7点 カテゴリ:社会 長年、日の中小企業を観察し続けてきた著者が、さまざまな事例を通じて現在の日の中小企業が置かれている難しい環境とその突破口を探ろうとした。製造業を中心とした豊富な事例はどれも興味深いものですし、また、「事業承継」という日の中小企業の最大の問題をわかりやすい形で指摘しています。 目次は以下の通り。 第1章 減少する日の事業所と中小企業 第2章 既存事業部門で起業 第3章 新たな事業分野に踏み込む創業企業 第4章 事業承継が中小企業の最大の課題 第5章 人口減少・高齢化、そしてグローバル化を前にして 終章 新たな構図へのチャレンジ 1980年頃まで、中小企業政策の分野では「小さい企業が多すぎる」という「過小過多」の問題がしばしばあげられていましたが、現在、中小企業はその数を急速に減らしています。 1991年には655万

    ookitasaburou
    ookitasaburou 2018/01/09
    日本で廃業率が開業率を上回るようになったのは90年代前半です。特に製造業では90年前後から一貫して廃業率が開業率を上回る状態が続いています(20pの表1-5参照)。
  • 山崎史郎『人口減少と社会保障』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月17 山崎史郎『人口減少と社会保障』(中公新書) 8点 カテゴリ:社会8点 「今後、人口減少が予想される中で日の社会保障制度はどうあるべきなのか?」という問題を、元厚生労働省の官僚であり、介護保険の創設に尽力し「ミスター介護保険」と呼ばれた人物が探った。 web中公新書の著者インタビューのページで、著者は自らのキャリアを次のように語っています。 1978年に旧厚生省に入省し、38年間政府の仕事に携わった後、昨年6月に退官しました。 その間、主な仕事として、1990年代半ばから厚生省で介護保険制度の導入、内閣府や内閣官房でリーマンショック前後の経済雇用対策などを担当しました。そして、2011年に厚生労働省社会・援護局長として、生活困窮者支援の素案づくりに携わりました。その後、内閣府の少子化対策担当などを経て、2015年から内閣官房まち・ひと・しごと創生部の地方創生総括官を務めまし

  • 高木久史『通貨の日本史』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    9月13 高木久史『通貨の日史』(中公新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 タイトルを見て、日史にそれなりに詳しい人なら、富銭、皇朝十二銭、宋銭の輸入、為替の登場、撰銭令、荻原重秀の貨幣改鋳、幕末の金貨流出、日銀行の成立、金解禁などこので出てきそうなトピックはある程度予想できるでしょう。 実際、これら主要トピックをしっかりと押さえ、教科書よりも深い解説を行っています。そして、それだけではなく北海道や沖縄、近代日の植民地の通貨事情など、普段読む日史のではなかなか触れられることのない部分にまで目を配っているのがこのの特徴です。 目次は以下の通り。 第1章 銭の登場―古代~中世 第2章 三貨制度の形成―戦国~江戸前期 第3章 江戸の財政再建と通貨政策―江戸中期~後期 第4章 円の時代へ―幕末維新~現代 日最初の貨幣というと、少し前に歴史を習った人は708年の和同開珎、最近習

  • 對馬達雄『ヒトラーに抵抗した人々』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月21 對馬達雄『ヒトラーに抵抗した人々』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 ヒトラーとナチ・ドイツがある程度の国民の支持を受けて政権を獲得し、その統治は第2次世界対戦が始まって戦況が悪化するまで高い支持を得ていました(もちろん、そこにはからくりもあって、そのからくりは石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)に詳しい)。 しかし、すべてのドイツ人がヒトラーの起こした戦争や、ユダヤ人の迫害を支持したかというと、もちろんそうではありません。困難な中にあっても、ナチ政権を倒そうとした人、ユダヤ人を助けようと活動した人々がいます。 このは、愛国心や歴史認識の問題を考えさせるとともに、そうした「市民的勇気」を発揮した人々の姿を描きだしています。 目次は以下のとおり。 第1章 圧倒的に支持されたヒトラー独裁と市民の抵抗戦時体制下の反ナチ運動) 第2章 ホロコーストと反ナチ・

  • 石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月27 石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」、これはこのの帯に書かれている問いであり、昔からとり上げ続けられてきた問いです。 ヴァイマル共和国という非常に民主的な体制からナチの独裁へ。この大きな変化の要因として、ヒトラーのカリスマ性、ナチの巧みなメディア戦略、ナチ政権の経済政策などがあげられてきましたが、そうした中で、ある意味でヒトラーやナチの「神格化」が行われてしまったというのも事実でしょう。 去年、出版された高田博行『ヒトラー演説』(中公新書)では、主にヒトラーの演説のカリスマ性やナチのメディア戦略の「脱神話化」が行われていましたが、このでは、当時のドイツ社会を分析することによってヒトラーの「独裁体制」やナチ政権の政策の「脱神話化」を行っています。 さらに、これに加えてこの

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  • 坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月11 坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 サブタイトルは「社会的選択理論とは何か」。単純な多数決の問題点を指摘し、その代替案、さらには多数決に依拠している現在の政治のこれからのあり方を問う非常に面白いになっています。 個人的にこのが素晴らしいと思った理由は2つあって、それは(1)社会的選択理論を初歩から丁寧かつ明晰に説明している点、(2)明晰であるがゆえに著者との根源的な政治観や人間観の違いが明らかになって政治に対する認識がより深まった点、の2点です。 まずは(1)の部分から。 社会的選択理論の入門書というと、佐伯胖の『「きめ方」の論理』あたりが有名だと思いますが(佐伯胖のでは「社会的決定理論」となっている)、さすがにもう35年も前のですし、何よりも300ページ近い、それなりに専門的なです。 また、社会的選択理論に触れたの中には、いきなり「

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  • 横手慎二『スターリン』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月9 横手慎二『スターリン』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 帯裏に書いてある紹介文は以下の通り。 「非道の独裁者」―日人の多くが抱くスターリンのイメージだろう。一九二〇年代末にソ連の指導的地位を固めて以降、農業集団化や大粛清により大量の死者 を出し、晩年は猜疑心から側近を次々逮捕させた。だが、それでも彼を評価するロシア人が今なお多いのはなぜか。ソ連崩壊後の新史料をもとに、グルジアに生まれ、革命家として頭角を現し、最高指導者としてヒトラーやアメリカと渡りあった生涯をたどる。 スターリンの評伝ということで、おそらく一般的な日の読者が求めるのは「非道の独裁者の正体」といったところなのですが、上記の文章を読めばわかるようにこのの内容はそれとはちょっと違います。 スターリンの生涯とたどりつつ、その政治的な業績を「ソ連(ロシア)史の中でどう捉えるか」ということが、このの力点にな

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  • 川田稔『昭和陸軍全史1』(講談社現代新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    8月1 川田稔『昭和陸軍全史1』(講談社現代新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 『昭和陸軍の軌跡』(中公新書)が面白かった川田稔が、昭和陸軍について「満州事変」、「日中戦争」、「太平洋戦争」の3巻構成で余すことなく描こうとするシリーズの第1巻。 目次は以下の通りです。 第1章 満州事変への道 第2章 満州事変の展開―関東軍と陸軍中央 第3章 満州事変をめぐる陸軍と内閣の暗闘 第4章 満蒙新政権・北満侵攻・錦州攻略をめぐる攻防 第5章 若槻内閣の崩壊と五・一五事件 第6章 永田鉄山の戦略構想―昭和陸軍の構想 第7章 石原莞爾の戦略構想―世界最終戦論 これをみればわかるように、このは満州事変の勃発から五・一五事件、国際連盟からの脱退、塘沽停戦協定までの時期を扱っています。 また、満州事変にいたる陸軍内部の動きを説明するために、宇垣派の形成、永田鉄山・岡村寧次・小畑敏四郎による「バーデン・

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  • 高田博行『ヒトラー演説』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月5 高田博行『ヒトラー演説』(中公新書) 8点 カテゴリ:歴史・宗教8点 著者は近現代のドイツ語史を専攻とする言語学よりの人で、帯には「25年間150万語の演説データから扇動政治家の実像に迫る」との文句。 ヒトラーの代表的な演説をとり上げてそのレトリックに迫るようなかと思いましたが、演説家、そして政治家としてのヒトラーを時代ごとに追う内容で、思ったよりも伝記的な色彩の強いでした。 ですから、ヒトラーのことをある程度知っている人には少しまだるっこしい部分もあるかもしれません。ただ、最後まで読むとヒトラーの演説の一番のキーポイントが浮かび上がるちょっと凝った構成になっています。 目次は以下の通りです。 序章 遅れた国家統一 第1章 ビアホールに響く演説―一九一九~二四 第2章 待機する演説―一九二五~二八 第3章 集票する演説―一九二八~三二 第4章 国民を管理する演説―一九三三~三四

    高田博行『ヒトラー演説』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期
  • 矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月8 矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書) 7点 カテゴリ:思想・心理7点 昨年公開された映画『ハンナ・アーレント』も話題になった、政治哲学者ハンナ・アーレントの評伝。 思想家の評伝は、(1) 伝記的事実、(2) その思想家の思想の変遷と時代との関わり、(3) その思想家の後世への影響をはじめとする思想史上の意義、といったもので構成されるものだと思いますが、このには(3)の部分がほとんどありません。 それを象徴するのがアーレントの各著作への言及で、『全体主義の起源』、「人間の条件』といった主著と同じくらいの紙幅を使って、『暗い時代の人々』に所収されている「暗い時代の人間性 ー レッシング考」が紹介されています。そして、もちろん『イェルサレムのアイヒマン』についてもその後の論争を含めて紹介されていますが、『革命について』への言及はほとんどありません。 つまり、そういうだと思って

    矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期
  • 青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月20 青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』(ちくま新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 青木昌彦の仕事を追いかけていた人にとっては何も目新しいことはないかもしれませんが、彼のをきちんと読んだことのなかった身としては非常に面白かったです。 「はしがき」に「青木昌彦の『経済学入門』ではなく、「『青木昌彦の経済学』の入門」という編集者の誘いでこの仕事を引き受けたと書いてある通り、「経済学入門」といったではないのですが、青木昌彦のアイディアとその理論の射程、さらにはその応用としての中国経済の分析が楽しめます。 自体は既出の論文や、講演の抄録、対談、新聞への寄稿などをまとめたもので、その出来にはばらつきがあるのですが、それでも個人的には得るものが多かったです。 目次は以下のとおり。 第1章 経済学をどう学ぶか 1  私自身、こう経済を学んできた(聞き手 岡崎哲二) 2  経済学を学ぶ心構え─

    青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期
  • 翁邦雄『日本銀行』(ちくま新書) 6点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月28 翁邦雄『日銀行』(ちくま新書) 6点 カテゴリ:政治・経済6点 日銀行金融研究所所長などをつとめ、かつては現在は日銀行副総裁である岩田規久男との間に「マネーサプライは日銀が操作可能か?」という「マネーサプライ論争(岩田-翁論争/翁-岩田論争)」を繰り広げた(著者は日銀の立場からマネーサプライの操作が不可能であると主張した)翁邦雄が中央銀行の役割、日銀行の金融政策などについて解説した。そして当然ながらアベノミクスについてもコメントしています。 目次は以下の通りです。 第1章 中央銀行の登場 第2章 主要中央銀行のトラウマ 第3章 日銀行の登場 第4章 日銀行の組織と業務 第5章 バブル期までの金融政策 第6章 バブル期以降の金融政策 第7章 デフレ脱却の理論 第8章 クルーグマンと「日型デフレ」 第9章 中央銀行と財政政策 第10章 「異次元の金融緩和」とアベノミク

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