私は自分のためのご飯を作れなかった。それでいつもお腹を空かせて泣いていた。けれども、人にご飯を求めることはしなかった。人からご飯を恵んでもらってしまったら、その味をしめて無尽蔵にご飯を要求してしまうであろうことが分かっていたからだ。だから、自分のためにご飯を作れるようにならねばと思っていた。 けれども、自分のためにご飯を作ることはとても難儀だった。ご飯は価値のある人間の食べ物であり、価値のない自分のためのご飯など作る気にもならないのが正直なところだった。お腹は空いたままだった。 そしてある日、私はついにひもじさに負けて乞食をしてしまった。自分では乞食をしたつもりはなかったが、とってしまった行動は乞食そのものだった。そうしたら、奇跡が起きた。私の口にご飯をくれる人が現れたのだ。そのご飯は、本当に私が食べたかったもので、とてもとても美味しかった。 私が真っ先に思ったのは、この人を喰いつくしてし
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