しばらくぶりに、「ナポリタン」の5文字を見た。 秋葉原から、ゆっくり歩いて約1時間。いつものようにランチタイムを逃して、たどり着いた有楽町駅。お店に入ってお昼ごはんを食べようと周囲を見回すも、駅前はチェーン店ばかりで気乗りがしない。 ――いえ、違うのです。チェーン店がダメというわけではないのです。なんたって、こんなご時世でございます。ただでさえ外出の機会が減っている今、「出かけた先での外食」は貴重なイベント。自宅と近所の店々を行き来するルーチンライフでは決して摂取することの叶わない、普段は口に入れない食べ物を食べたい。そんな強い思いがあるのです。そう、「外食」とは、この停滞した基底現実の日常に彩りをもたらす「祭り」であるべきなのだ。「祭り」と書いて、「フェステイバル」と読む。 そんな折に入った喫茶店で見たのが、「ナポリタン」である。……ナポリタン、ナポリたん、なぽりたん。マスクの下で含むよ