ラテンアメリカ文学者の野谷文昭・東京大教授が定年退職を前に、東京大本郷キャンパスで1日、最終講義を行った。2008年に着任、本郷にはなかったラテンアメリカ文学の研究・教育を立ち上げ、授業やゼミは学生の人気が高かった。一般公開された大教室は、立ち見がでるほどの熱気に包まれた。 最終講義のタイトルは「深読み、裏読み、併せ読み――ラテンアメリカ文学はもっと面白い」。ボルヘス、ガルシアマルケス、バルガスリョサといった名だたる作家が登場する1960年代にさかのぼって講義は始まった。「ラテンアメリカ文学から、孤立や敗北をおそれない勇気を学んだ。出会いは宿命だった」。世界的なブームをへて、翻訳は増えた。だが訳書は面白く読まれているのか、と疑問を投げかける。 ■ラテンアメリカ文学は読み手の中で成長 ガルシアマルケスは多くの作品が訳されているが『百年の孤独』以外は読まれていないとも言われる。固有名詞の多さに