■何げない日常、繊細に美しく 学園ギャグ風のタイトルとは裏腹に、ガラス細工のような美しさと危うさを秘めた物語だ。 舞台はとある田舎町。小学4年生の少女・きらは、書店員で水泳の臨時教員である“赤パン先生”こと鮎川に幼い恋心を抱いている。一方、彼女の年の離れた異母姉で中学の国語教師である庸子もまた鮎川の明朗な人柄に惹(ひ)かれていて……。 そんな一種の三角関係を縦糸に、何げない(でも小学生にとっては波瀾〈はらん〉万丈な)日常を繊細かつ瑞々(みずみず)しい筆致で紡ぐ。きらめく世界、高鳴る鼓動、友達とのすれ違い。それらに一喜一憂する純真無垢(むく)な妹と、子供時代の体験から自己肯定感を欠く姉のコントラストが胸を刺す。もやもやした感情でいっぱいに膨らんだ風船を抱えているかのような緊張感が背中を這(は)う。 ここで見逃せないのは、作品全体の根底に脈打つ作者特有の生々しい身体感覚だ。自分が泳いでいるかの