【都築和人】第7回小島信夫文学賞を受賞した小島正樹さん(71)の『野犬飼育法―彼またはKの場合―』が鳥影社から出版された。分身Kから突然電報が舞い込み、Kが飼いならそうとする野犬をめぐって、Kとの間で緊張関係が高まっていく。カフカを思わせる不条理な味わいと、展開を予測させないミステリー小説にも似た構成で最後まで引きつける。 小島さんは岐阜県立加納高校時代から文芸部に所属し、卒業後も同人誌に作品を書いていたが、単行本として発表するのは初めて。『野犬飼育法』は1969年に同人誌に未完のまま発表した作品を40年ぶりに書きつないだ。 小説の時代設定は60年代。「高度成長が始まって私たちの世代は理想と現実との間で悩んだ。当時の選択が今の日本の原形にもなっているのではないか。自責の思いも込めて60年代を生きた自分たちの世代をどうしても書き上げたかった」 野犬を飼いならすことで世界をひらこうとするKと野