■旧暦の季節感は不思議な味わい 冲方丁の歴史小説『天地明察』が映画化され、絶賛上映中……だからか知らないけれど、『日本の七十二候(しちじゅうにこう)を楽しむ』が売れ続けている。旧暦の季節感を味わおう、という本である。文章を書いている白井明大は詩人で、イラストレーターの有賀一広が絵を担当。 初版が出たのが3月で、私が買ったのは9月に出た第7版第2刷。ロングセラーだ。この本に『天地明察』は出てこないけど、江戸時代に「本朝七十二候」をつくったのは渋川春海。『天地明察』と無関係ではない。 七十二候というのは、中国から伝わった季節の分けかただ。1年を24に分けるのが二十四節気で、七十二候はさらに細かい。 二十四節気は「秋分」や「立冬」や「冬至」などよく知られているが、七十二候の名称はちょっと不思議だ。たとえば二十四節気の「寒露」は10月8日ごろから10月22日ごろまで。七十二候はこれをさらに三分し、