村山知義 劇的尖端 [編]岩本憲児 東京の世田谷美術館で「すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙」展が開かれている(9月2日まで)。年初からの各地巡回展だが、なぜ、今、村山知義なのだろうか。 1920年代のモダニズムが新鮮に見える魅力だろうか。村山という人間の謎と、その芸術の未解明部分の多さに、ひかれるからではあるまいか。何しろ村山は「日本のダ・ヴィンチ」と称された、マルチ・アーチストである。本書は演劇と映画、前衛美術、小説等の分野を、編者を含めて十二人の専門家が、村山の果たした役割を評価し、問題点を要領よくまとめている。 たとえば、國吉和子氏は日本近代舞踊史で欠落している、村山と藤蔭(ふじかげ)静枝の関係を指摘している。村山は新舞踊の台本を書き演出もした。これは自伝にも記載されていないという。川崎賢子氏は、忍者ブームを巻き起こした村山の小説『忍びの者』の影響を述べている。他の業績、本の装丁