■帝国の総力戦が与えた衝撃 第2次世界大戦の終結から67年、そして2年後に第1次大戦の開戦百周年を迎えようとしている夏。「未完の戦争」として第2次大戦につながり、ロシア革命を生んだ第1次大戦への関心が国内外で高まっている。総力戦となったがゆえに近代世界のあり方を決定的に変え、「破局の20世紀」の発端となった第1次大戦。果たしてそれは、二つの大戦と冷戦を経た三つの戦後を迎え、しかし今なお「戦時」が絶えない現代世界に生きる私たちにいかなる問いを突きつけているのだろうか。 この日本人になじみの薄い戦争については、J・J・ベッケールとG・クルマイヒの『第一次世界大戦』上・下(岩波書店・各3360円)が貴重な成果として訳出された。しかし、仏独両国における歴史認識の共有という使命感を強く反映した本書では、第1次大戦はあくまで「ヨーロッパ大戦」とみなされている。 他方、開戦直後の1914年8月、日本人は