「人っ子一人いない。なんてひどい空港なんだ」 平成23年2月14日のバレンタインデー。日本初の本格的な格安航空会社(LCC)として4日前に産声を上げたピーチ・アビエーションの井上慎一最高経営責任者(CEO)は、初めて降り立った関西国際空港の光景に思わず息をのんだ。 ピーチは24年3月に関空に就航するにあたって最初に本社を関空第1ターミナル西側の複合施設「エアロプラザ」に置いたが、ビルに入る飲食店やホテルは閑古鳥が鳴き、たまに訪れるのはターミナルと間違えた旅客という惨状だった。 それから3年半、関空はピーチ専用の第2ターミナルを中心に活気にあふれている。早朝でも格安運賃で旅行を楽しむため女性客やシニア層が出発を待ち、エアロプラザの飲食店もにぎわう。 ピーチの就航が「関西に眠っていた潜在需要を掘り起こした」(井上CEO)。ピーチ効果は関空全体に及ぶ。23年度に1386万人だった旅客数は25年度