日本の会社では、社員の能力を表現する際に「あいつは使える」とか「あいつは使えない」といった表現がなされる場合がある。 僕は、この言葉には子供の頃からずっと違和感があった。「子供の頃から」と書いたのは、僕の父がたまに会社の愚痴をこぼすときに、こういう表現をしていて、子供ながらにすごくイヤな気持ちになっていたからだ。人間に対して、「使える」とか「使えない」という言葉を何の抵抗もなく使用する大人たちを見て、人はモノじゃないのに、なんで「使える」とか「使えない」とか、そういう言葉を使うんだろうと思ったことを覚えている。モノであれば、使えなくなったものはそのまま捨てられることになる。じゃあ人間も、「使えない」場合には捨てられるんだろうか。大人の世界はものすごく怖い――幼い僕はそんな風に感じた。 もういい大人になって、実際に働くようになった今でも、人に対して「使える」とか「使えない」という言葉を用いる