金属の色の物理的起源 東京農工大学 佐藤勝昭 1.はじめに シロガネ(銀)、コガネ(金)、アカガネ(銅)、クロガネ(鉄) 、ハッキン(白金)など金属の和名は色にちな んで付けられていることが多い。私が、金属の色に興味をもったのは、貴金属の金色と黄銅鉱や黄鉄鉱 の金色はどう違うかという疑問からであった。測色学的に見れば、金色というのは、赤-緑の波長領域 の反射率が高いため、白色光に対しこれらの色が選択反射されることによって視覚にもたらされる色で ある。銅は、赤の波長域を選択反射する。銀は、可視光線の全ての波長域を均等に反射するため色は付 かない。一方、鉄は、可視光線の全ての波長域で反射率が低いため黒く見える。 ここでは、 このような金属が示す固有の選択反射性がどのような物理学的起源から生じているのかに ついて電子論の立場から記述したい。金属の高い反射率は自由電子の集団運動がもたらすものである