船の安全性は,大別して,過度に揺れたり転覆を起こさないための安定性と,船の構造が大きく変形したり破壊したりしないための強さとに分けられ,船舶工学では後者を船体強度と称している。商船においては,建造時,進水時,航行時,入渠(にゆうきよ)時,衝突時,座礁時の強度を検討するが,航行時以外は船の一生の中で期間が限定された特殊な状態であり,強度における考慮も局部的であるので,通常,船体強度といえば航行時における強度を指す。以下では商船の船体強度について述べるが,軍艦や漁船などでも基本的な考え方は同じである。 船体強度は検討対象とする船体構造の範囲によって,(1)船体を船の長さ方向に断面が変化する1本のはりとみなしたときの全体強度,(2)商船の主要構造部分である船倉をより詳しく検討するため,船倉部分を骨組構造,あるいは板構造とみなしてその強度を考える部分構造強度,(3)船倉内部の詳細な構造や船首尾部,