細胞の中に存在するものの中で最もよく観察されてきたのは、「染色体」であると言っても過言ではないでしょう。細胞を初めて観察した先人達は、細胞分裂の際に出現しては消えるこの不思議な構造物に魅了されたに違いありません。今では、染色体の主体は遺伝を司るDNAで、細胞から細胞へ、親から子へ、世代から世代へと遺伝情報を伝える極めて重要な仕事を担っていることはよく知られています。染色体の数はヒトでは46本(図1)ですが、この数は生物種によってほとんどの場合一定で、染色体数が違えば多くの場合は種が違います。ところが稀に、染色体数が1か2、またはそれ以上異なることもありますが、このような数の変異は一般的に次の世代には受け継がれません。しかし、安定してある一定の数の「ゆらぎ」を維持している生物種が存在します。このような数の「ゆらぎ」を多型と呼びます。染色体数の多型の原因となっているのは、過剰染色体(super