経済学の基本を適切に踏まえたうえで時事的な問題にユニークな視点を提供し続けることにかけて、日本では原田泰の一連の仕事がまずは注目されるべきだろう。 もちろんユニークな経済本は多い。本屋の店頭にもその手の本が目白押しだ。しかし、例えば経済危機の本なら、経済の危機的状況を説明するよりも書いている人たちの危機的な経済理解を明らかにしているものが大半だ。経済学のまっとうな理解とユニークな問題提起の組合せはいまの日本では希少価値である。 さて本書は原田が大和総研エコノミストの神田慶司氏とタッグを組んだ最新作である。テーマは「物価」。特に原油などの資源価格と物価との関係、インフレーション(物価の上昇)のメカニズム、先進国やジンバブエなどの世界のインフレーションの展望、そして古代から現代までの歴史の中におけるインフレーションを扱っている。 その基本的な視点は、物価を考える上ではマネー(貨幣)が決定的に重