酒棚にN.Y.を思い返す 『鮮や吟蔵』の住所は代々木だが、訪ねるならJR新宿駅南口から向かうと非常に近い。ビルの3階。エレベーターの扉が開くとそこがもう店内だ。 一歩踏み入れると、いきなり酒棚と長い直線的なカウンターが目に飛び込んでくる。とくに酒棚はインパクトがある。 1990年代後半、ニューヨーク・マンハッタンはソーホーのボンド・ストリートにあるスシ・レストランでの驚嘆を思い返した。 そこはウェイティングバーとアフターディナーの本格バーのふたつがあった。日本ではちょっとお目にかかれないようなスシ・ロールなんぞ食べた後、アンドリューというマネージャーが「とにかくバーを見てくれ」と無理矢理席を立たせ、私を案内した。 たしか地下だったと思う。黒で統一されたオーセンティックなつくりのそのバーのボトル棚は、なんとすべて日本酒の一升瓶で埋まっていた。アンドリューは「どうだ」と言わんばかりの得意気な顔