政権選択の時が迫っている。危機感を深める自民党は与党としての政権運営能力を誇示し、攻める民主党は閉塞状況を打破する変革力を強調する。 では、いずれの党が信頼に足るのか。掲げた改革の旗印を信じられるか。 最も簡単なリトマス試験紙は、彼らが自らの利権、既得権益にどれほど切り込むつもりか、である。大票田を失う恐怖に耐えて、合理的な政策を打ち出そうとするかである。その本気度を占う格好の材料は、農業政策であろう。 日本の農業は、過剰かつ長期に渡る保護政策で競争力を失った典型的産業である。同時に、競争力喪失という事態に開き直り、多くの年月が流れてもいっこうに解決策が講じられない日本全土に広がる既得権の岩盤である。その古くて新しい問題の構造を、まずおさらいしておこう。 日本の農業の縮図であり、象徴であるのは米である。そして、米を作る農家には、二つの謎がある。 米作農家のおよそ4割、59万戸は、