長らく関西の平たいところに住み続けてきたので、頭の中がすっかり条里制になっていた。 条里制の頭とはどのようなものか。たとえば、ここを曲がらなくてももう一つ向こうの角で曲がればよい、と考える。なぜなら街路は碁盤の目のようになっており、一つ先で曲がっても、同じ通りに出るからだ。あるいは、一度曲がってもう一度曲がれば、おおよそもと来た方向を逆行することになる、と考える。なぜならほとんどの街路は直角に交差しており、一度曲がってもう一度曲がったなら、合計180度曲がったことになるからだ。 この条里制の頭が、東京に来てからというもの、とんと役に立たない。平行に走っていると思った道が、あちこちで交わっている。理不尽な三角地やY字がある。一つ先で曲がったばかりに逆行している。一度曲がってもう一度曲がると元の位置に戻っている。直角交差で出来ているこちらの方向感覚を狂わせる。 さらに困るのが、山手、微高地を歩
