本を読むことは旅することに似ています。そして、旅に迷子はつきものです。 迷えるあなたを、次の場所への移動をお手伝いする「標識」。 この「読書標識」はアナタの「本の地図」を広げるための書評です。 今回は詩人・岩倉文也さんが、書評『これから泳ぎにいきませんか』(穂村弘)について語ってくれました。 ぼくは中学時代の三年間を読書感想文を書くことに費やした。一年のときは太宰治の『人間失格』、二年のときはカミュの『異邦人』、三年ではドストエフスキーの『地下室の手記』。それぞれの作品を題材に、ぼくは傾け得るすべての力を使って感想文を書いたのだった。 今思えば訳のわからない情熱だったなと思う。夏休みに入る前から「あれで書こうこれで書こう」と思案をめぐらし、どの本を読めば効果的な感想文が書けるのか考えることに熱中した。そしていざ本を読みはじめれば、マーカーで線を引き付箋を貼り、ぼくの心を震わせる言葉を、一文
