ちいさな城下町 [著]安西水丸 ○歴史学者A「いいよなあ、小説家は。ろくに調べもしないで書けるんだから」 ○小説家B「ふん。いいよな、歴史学者は。調べさえすりゃあ、書けるんだから」 有名なやりとりだが、AとBの具体名は存じ上げない。 猿飛佐助より霧隠才蔵が好き、映画の主役より脇役が好き、奇妙な芸術性に傾いていくものより安価で素朴な民芸品が好き、読売ジャイアンツより中日ドラゴンズが好きという著者は「10万石くらいの城下町が好き」である。 「東京生れで東京育ちのくせに中日なんかを応援するってのは、(おまえが)心がねじ曲った子供だったって証拠だ」(by嵐山光三郎)という言葉に大いに納得しながら、著者は地方都市に一人足を運んでは、気の向くままに名所旧跡を散策する。その旅の記憶が、味わい深い一冊としてまとめられた。 たとえば群馬県安中市は、安中藩3万石の城下町。徳川四天王の一人・井伊直政の嫡男(ちゃ
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