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ブックマーク / delete-all.hatenablog.com (22)

  • hagexさんの痛ましい事件について - Everything you've ever Dreamed

    刺殺された岡さん、「Hagex」の名でブログ(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース hagexさんがネット上のトラブルで殺されてしまった。「ネット炎上を題材にしたセミナー直後、ネット上のトラブルで殺害される」彼が大好物だったはずの話で彼自身が登場人物になってしまったのがあまりにもつらい。一報を聞いてから12時間以上が経ったがショックは抜けない。因果関係はわからないけれど、朝から右の耳が聞こえにくくなっている。無理もない。彼とはここ数か月、月一で酒を飲み、くだらない話をする仲だったのだから。報道によって事件の概要が判明するにつれ、彼について少々誤解されているような気がしたのと、僕宛に取材の申し込みが何件か来ていたので(体調が悪くて断った)、「彼がどういう人間でどういうネット活動をしていたのか」「事件の背景と思われるもの」について僕なりの見解を残しておきたい。 彼から「ビールでも飲み

    hagexさんの痛ましい事件について - Everything you've ever Dreamed
  • 自死遺族は自殺報道についてどう考えているか。 - Everything you've ever Dreamed

    アメリカの俳優、ロビン・ウィリアムズが死んだ。自殺らしい。「グッド・ウィル・ハンティング」はお気に入りの作品だ。合掌。僕が彼の自殺を知ったのはインターネット上のニュースで、直接、関係者でも知人でもない僕が、米国にいる彼の自殺を知るのは報道を介するしかない。限られた情報からわかったことは重度のうつで悩んでいたことと死因くらいのものだ。 つい先日の日の著名な研究者の自殺も報道で知った。記憶が正しければ、ふたつのニュースともインターネットのポータルサイトでは新聞でいえば一面のヘッドラインに掲載されていたはずだ。違うのは日のそれはかなり早い段階で自殺の場所や方法、それから遺書の概要までもが報じられていたこと。故人が建物の何階で自殺をはかったか、そんな情報に何の意味があるのだろう。 過剰な自殺報道は控えるべき、という意見もある。内閣府もメディア向けに自殺予防のためのガイドラインを出している。著名

    自死遺族は自殺報道についてどう考えているか。 - Everything you've ever Dreamed
  • 「自殺なんて馬鹿みたい」と母は言った。 - Everything You’ve Ever Dreamed

    死んだ父への不満や怒りをどこへ吐き出せばいいのだろう、ついこのあいだまで僕はそんなつまらないことばかり考えていた気がする。父は40過ぎで命を絶った。理由はわからない。もしかすると理由なんてなかったのかもしれない。母が父と夫婦を過ごしたのは20年弱。あまりにも短すぎた。突然、父を喪った母への同情は僕のなかで父への怒りと侮蔑になっていった。 苦しい家計を支えるために母は隣町の葬儀屋で働きはじめた。結婚以来専業主婦を続けていた母の苦労は想像に難くない。葬儀屋の仕事は立ち仕事が多く、土日も関係なく、深夜に及ぶこともよくあった。どうして葬儀屋なんだ?他に仕事があっただろう?僕の問いに対する母の答えは忘れられない。「金がいいから。残業代と深夜手当がつくからね。それに…朝から晩まで働けば気が紛れるでしょ〜」僕の父への怒りはより強く激しいものになった。 大学2年の夏。蒸し暑い8月の夜。僕は車で母を迎えにい

    「自殺なんて馬鹿みたい」と母は言った。 - Everything You’ve Ever Dreamed
  • 自死遺族の生き方 - Everything you've ever Dreamed

    僕が迷子になったとき「死んだオヤジが連れて行ってしまった」なんてオカルトじみたことを言ったのは父である。迷子になったのは昭和52年師走、横浜駅。当時3歳。もっとも当事者の僕にその記憶はなく、ずっと後、中学生になってから母から聞かされたのだ。そのとき3歳の僕をなかなか見つけることが出来ず父と母は最悪の事態も覚悟したらしい。父は極めて楽観的で楽しい人なのだが、同時に諦めも早い人で、その前年に亡くなった祖父を持ち出して「オヤジが連れて行ってしまった」と母に話したらしい。 当時、父が祖父のことでキズつき疲れていたのは想像に難くない。祖父の遺体は海で見つかったと聞かされている。姿が見えなくなってから富山県高岡の海岸で見つかるまで一週間かかったとも。祖父は何も語らずに死んでしまった。いつだって肝心なことは言葉にされないまま終わる。そういうものなのだろう。僕が迷子になったのはその直後だ。 「オヤジが連れ

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  • ラブホテルをはじめるのはあなた - Everything you've ever Dreamed

    5月下旬。また父の命日が巡ってくる。父が自殺したとき僕は18才で、悲しみ、悔しさ、怒り、後悔、そういったものが溶け合わずにごちゃ混ぜになった思いや、生活や将来への不安はもちろんあったけれども、ほとんど音も立てずに排水口に流れていく冷たい水のように消えてしまった父の命の儚さにただ呆然としていた。 あのとき、呆然とするばかりの僕に母が言ってくれた「家を改修してラブホテルでもはじめよう」とくだらない言葉の強さと明るさに、僕がどれだけ照らされ、救われただろうか。言葉は神だと当に思った。今もその思いは変わらずにいる。当時も今も、父が自ら命を絶ったことについての怒りはない。ほとんど自由に生きられない僕たち人間が、ほとんど唯一自由に出来るのが自分の命ならば、死に方くらい選べたっていい。そう、自分に言い聞かせてきた。 嫌なのは美化することだ。父は遺書を、言葉を何も遺していかなかった。親戚たちは「お父さん

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  • 私の異常な結婚生活 または私は如何にして家族の秘密を守るために妻をあざむくようになったか- Everything You’ve Ever Dreamed

    父の自殺を秘密にしている。あのとき。申し合わせたように僕ら家族は父の自殺を「事故」とした。誰も、何も、何一つ悪いことはしていないのに、気付かれないように、悟られないように、隠さなきゃ隠さなきゃ隠さなきゃ、何かから追い立てられるように隠した。僕らを追い立てたものの正体。それは自殺という行為に対する偏見と、「まさか身内が…」という衝撃、「僕ら家族が追い詰めてしまったかもしれない」「なぜ気づいてあげられなかったのだろう」という罪の意識、そして何より「偏見で見られることを避けたい」「罰を受けたくない」という我が身かわいさが産み出した化け物だった。もしかすると純粋に父の死を悲しめなかった僕は隠すことによって代理で純粋に父の為に涙を流してくれる人を捜していたのかもしれない。安全な場所で自分の傷が癒えるのを待ちながら。以来、化け物は暴力をふるうことなく静かに僕ら家族の闇に棲んでいる。眼光は依然鋭い。

    私の異常な結婚生活 または私は如何にして家族の秘密を守るために妻をあざむくようになったか- Everything You’ve Ever Dreamed
  • 私の異常なお見合い・覇王伝 または私は如何にして独身の自由をかなぐり捨て結婚を決意するにいたったか - Everything You’ve Ever Dreamed

    突然だが結婚することにした。来月から彼女と暮らす。籍を入れるのは来月上旬の予定。身内で不幸が続いているので、当面、式やパーティーはやらず、来年あたり、不幸のホップステップジャンプが無事着地して落ち着いたら、ささやかなパーティーをやろうと彼女とは相談している。プロポーズの言葉は二人だけの秘密。当事者以外が聞いても面白いとは思えないし。「結婚するかい?」「ハイ、キミとなら」。ね?面白くない。面白くないと言われればそれはそれで腹が立つが。 いままで彼女との結婚を考えなかったかといえばウソだ。僕は、語感からすると矛盾しているようなことを述べているように聞こえるかもしれませんが、筋金入りのインポテンツ。そんな病気を抱えたまま、嫁をもらうわけにはいかない。もし彼女に触れたとき、反応しなかったら彼女が可哀想だろう?。だから僕が病気に打ち勝ったとき、それがいつになるかわからないけれど、そのとき彼女がまだ僕

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  • 私の異常なお見合いZ・または私は如何にしてAKBコスプレイヤーの策略にはまり式の日取りを決めるようになったか - Everything You’ve Ever Dreamed

    桃栗三年柿八年、時間がかかるかもしれませんが頑張りませうとお医者さんがいってくれたがまさかここまで時間がかかるとは想定外、インポテンツ丸三年、桃栗超え、僕は柿。僕はギャルが好きなピーチジョン、マロングラッセ…ではなく、囲碁クラブで提供される柿ピー。ピーの明るさがやけに悲しい。酒を飲まずにいられない。 ノッピー☆の勇姿(2010年夏) そのうえ年末から公私ともにうまくいってない。上司にはさらに疎まれるようになったし、祖父は病に倒れた。日曜の夜。現状を嘆きピーピーめそめそひとり飲んでいると携帯が鳴る。見なくてもわかる。シノさんからのメールだ。シノさんは僕とお見合いをしたお嬢さんで母親の友人の娘さん。趣味コスプレとお人形と戦国時代。レイヤー時の名前はノッピー☆。バストはDカップ(推定)(当社比)。今年の大河ドラマ「江」はシノさんが愛している戦国時代を舞台にしている。その感想メール。メールの末には

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  • 綺麗な死にざま。もがけ、あがけ。 - Everything You’ve Ever Dreamed

    綺麗な死に方ってなんだろう?祖父が入院して以来そんなことを考えている。人によって定義は違うだろうけれど、おそらく、晩節を汚さず、とか、立つ鳥跡を濁さずといった言葉が指し示す潔いイメージなんじゃないだろうか。 年末に倒れ鎌倉の病院に入院した祖父だが、今は、お医者さんから親族に連絡するよう言われるほどの危ない状態から脱している。安定しているといっても、一時的なものであって、百歳という年齢から手術は出来ず、つまり治らない。死んでいく祖父を僕は見ていることしかできない。 祖父は延命を拒否した。祖父は覚悟を決めたのだと親戚一同誰もがそう思った。 状態が安定して心にゆとりが出来たのだろう、祖父が今まで僕が見たことないような暴れ方をするようになった。「俺は棺桶みたいな部屋でいたくない」。「外に出たい。由比ヶ浜を散歩したい」。「なんでこんなところにいなきゃならないんだ、俺は治ったんだ!」。僕は見ていないの

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  • 延命するか?と祖父に訊いた。 - Everything you've ever Dreamed

    三つ子の魂百までというが小学生のころ僕のまわりで噂されていた「死んだ人間は火葬されるときにショックで棺桶のなかで生き返るが気付かれずに焼かれてしまう」という話は、当時近所に住んでいた背の高い女の子が突然病気で亡くなってしまった事実によって補強・増幅され、考察や検証もされずに僕のなかでほとんど恐怖そのもののようになっている。自分の声が届かない、意思が届かない、暗黒の恐怖だ。今日、祖父に延命措置をとるかどうか訊いたとき、そんな恐怖に関する古いエピソードを思い出した。 祖父は年末に体調を崩して入院していたのだけれど、今日は点滴が外れ、ものがべられるほどに回復した。とはいえ心不全と肝不全を起こしている明治生まれの祖父の身体が過酷な手術に耐えられるわけもなく僕や親族はこのままゆっくりと弱っていく様子をみていくしかない。それが突きつけられている現実だ。ものがべられるようになった勢いそのままに僕を相

    延命するか?と祖父に訊いた。 - Everything you've ever Dreamed
  • 象とオッサン - Everything you've ever Dreamed

    「彼女」は奥まったところにただずんでいた。子供たちの声が僕の背中を走り抜けていく。誰も立ち止まらない。時の流れは残酷だ。30年前の彼女はアイドルだった。たくさんの人たちに囲まれていた。華やかで、世界の中心にいるようにみえたものだ。僕は親父の肩車から頭や肩越しに彼女を眺めた。彼女の名はインディラ。上野公園にいたメスの象。今は骨格標となって博物館の展示コーナーにいる。インディラとの再会は偶然だった。たまたま友人たちと訪れた博物館でひとりはぐれ、目の前にあった案内をみて巨大な骨格標が、あのインディラだと気がついた。骨格だけになったインディラはあの長い鼻こそ失われていたけれど、遠くから眺めたときよりもずっと巨大に見えた。そう感じたのは、インディラよりも親父の力強さ、肩車していた親父の肉感が印象強く残っているからかもしれない。親父はインディラをさして「俺とあの象はだいたい同じ齢だ」と言っていた。

    象とオッサン - Everything you've ever Dreamed
  • 昔、アル中だった。 - Everything You’ve Ever Dreamed

    アルコール中毒、アルコール依存症の定義がどういうものかよく知らないが、二十代の終わりの二年弱のあいだの俺は間違いなくアルコール中毒だったと思う。 どんなありさまだったかというと、実際に俺と飲んだことがある人なら俺の飲みかた、飲みっぷりをイメージできると思うが、あれよりも百倍悪い。朝、起きてカップ酒を二杯飲み、昼、安酒の匂いが口から消えるとわけもなく寂しくなるので、大人の頭ほどもあるペット容器にはいった安焼酎を割らずにがぶがぶ飲んだ。夕方、缶ビールを飲みながら散歩をして晩酌は日酒、冷酒、熱燗。ウイスキーやワインは高いので飲まなかった。味なんかわからなかったので安さと手に入れやすさが最優先だ。 牧の倉庫で日雇い仕事をやりはじめたころは、いちばん、ひどかった。ヘイキューブという牧草を四角くかためて加工した飼料があるのだが、アメリカからコンテナで輸入されるそいつを、マタイと呼ばれた袋に詰め倉庫

    昔、アル中だった。 - Everything You’ve Ever Dreamed
  • The World Ends With You 07:00 - Everything You’ve Ever Dreamed

    すべてを包み、押し流していく時間。僕は流される。もちろんあなたも。流れていく時間の感じかたは人それぞれのもので、残念ながら生きているあいだに、僕にとっての、あなたにとってのベストな時間の感じかたが見つかるという保証は全くない。もしかするとそんなものは存在しないのかもしれない。あるいは、存在していても、決して、触れられないものなのかもしれない。今日の僕たちが、昨日の僕たちや明日の僕たちに声をかけることが出来ないように。あるいは、神のように。だけど、これが私の選んだ生き方です、という時間は存在しうる。 おそらく、彼の目には、血の通っている僕らだけでなく、目の前に置かれたグラスや、ほうれん草のお浸しといった命の宿ってないものでさえ、早送りのように映っているだろう。「遠いところをごめんなさいね」といって彼女は僕と彼の前に置かれたグラスにビールを注いだ。「気にしなくていいよ」と僕は言い、出張の帰りに

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  • 年賀状アーカイブス/19XX年、僕らの年賀状 - Everything You’ve Ever Dreamed

    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。僕は今年もロックするからね! 実家の大掃除をしていたら、押入れの奥からからダンボール箱が出てきた。なかには大昔に友達から届けられた年賀状が入っていた。二十年前後の時が流れてしまっていて、疎遠になってしまった友人も多いので眺めていると、ちょっとした同窓会をやっているような、懐かしい気持ちになった。 まずは、小学校高学年のときのものから。 1984〜86年くらい。 並べてみると、手書きやスタンプのものが多くて新鮮。今みたいにパソコンが家庭に普及していなかったからね。白黒のものも多かったのだけれど、小学生ならではのアイデアを出しているものもあった。アニマルにはアニマルの知恵があるのだ!ガオー! たとえば、これや、 これのように、 塗り絵!受け取る側に着色を強要。ウルトラセブンなら赤だけでいけるかも。 怒涛の書き込みで個人的メッセージを伝

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  • 続・私の異常なお見合い または私は如何にして恥も外聞も尊厳も捨てインポを告白するに至ったか - Everything You’ve Ever Dreamed

    スクリーンの深キョンドロンジョを舐めまわすように眺め、満喫し、さあ帰ろうとビールの残りを飲み干して、ふと隣を見ると先日僕とお見合いをした女性が座っていて驚いた。そうだそうだ。酒を飲んで深キョンのコスプレに没頭するあまり忘れてた。僕は二つ以上のことを頭に留められない。そして彼女は戦国時代好き西軍派、趣味コスプレ。 お見合い以来彼女からメールが送られてくるようになった。毎晩ほぼ午後十時に送られてくる。大半は「土手に花が咲いてましたぁー梵天丸もかくありたい(添付/花のついていない雑草)」「毘沙門天も攻め落とせなかった夜の小田原城の勇姿ですぅ(添付画像/一面ニ百万画素の闇)」というような嫌がらせメールで、最初は笑い飛ばしていたのだけれど、次第に精神が圧迫され、上下違うスーツを着てツートンカラー出勤をする、駅の便所で外人並みのウンコをしたあとで流すのを忘れ知らないオッサンに叱られる、という具合で生活

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  • if - Everything You’ve Ever Dreamed

    昨夜、友人のジョーク、「生きているのがつらい、死にたい」。先日、テレビのニュース、「自殺者が12年連続で3万人を超えた」「長引く不況で経済的要因による自殺が増えている」。こういう話を耳にするたびに僕は、潰されるような息苦しいような気持ちになる。あの日のことを思い出してしまう。痛みとともに。それから、僕は、知っている人、これから知り合う人、知り合わない人、いろいろな人たちにむけて、どうか命を断つようなことはしないでほしい。もういちど考えてみてほしい。周りにいる人のことを。もし孤独なら、好きなべ物でも面白かったゲームのことでも昔みた夢でもなんでもいい、自分と繋がっているもののことを考えてみてほしい。死なないでほしい。痛みのなかで、僕は祈る。 18年前の春、父は自殺した。動機はわからなかった。遺書もなかった。前兆もなかった。と思う。そう信じたい。葬儀が終わって落ちついたころ、母が僕に「いいお父

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  • 私の異常なお見合い・飛翔篇 または私は如何にしてインポという病と戦いながら性的な妄想を耐えぬいたか - Everything You’ve Ever Dreamed

    「覚悟をきめられたらコスプレの道は一道にございます」、って高らかに宣言して格的に現役復帰したシノさんはそちら(コスプレ)方面とあちら(歴史)方面とそっち(人形)方面で多忙を極め、最近はときどきメールをやりとりする程度の付き合いになっていて、僕の心の平穏、魂の安らぎ、静かな休日、快快便は回復し、楽しくない一年ぶりのトイレ掃除でも、「空が青いのはなんで?なんで?ブルーレットの青が映っているからだよ〜♪」ってナイスな調子で鼻歌が飛び出してしまうほど。これが僕の望んでいた世界。今、僕は自由なんだ。とびきり自由なんだ。シノさんは僕のお見合い相手でスザンヌ似の六波羅短大出身の25歳、コスプレ時にはノッピー☆を名乗っている推定Dカップ、職業は謎。 シノさんと会わなくてもお見合いは僕にくっついてくる。母親からは顔を合わせるたびにうるさく言われていて、こないだも「あんた36才になるんだよね?」なんて言

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  • 12月9日の背伸び - Everything You’ve Ever Dreamed

    僕の右胸にある黒い影が先々月よりひとまわり大きくなっているのがわかって、明日、僕は紹介された都内の病院でCTスキャンを受けることになった。昨夜、目にしたものが頭から離れなくなる。昨夜、僕は興味位で影の見つかった部位をインターネットで調べていた。検索結果に、ある病名が並んだ。ある種の圧力がその名にはあった。肺癌。十数年前、ひと夏のうちに僕の祖母を襲い、葬った病だった。 病院を出て家へ向かう。歩道に落ちた枯葉をスニーカーが踏みしめる音だけがした。「よくあることです」、診察した医師はなにごともなかったかのように、さらりと僕に言った。彼の患者をむやみに不安にさせまいとする気づかいと職業経験上から生まれた言いまわしはかえって僕を不安にさせた。よくあること?もし僕の胸にある影が悪性のものだとわかったとき、彼はそれでも言うのだろうか。さらりと、何事もなかったように。よくあること、と。 言葉は、想いを伝

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  • とある課長の断層撮影(CTスキャン) - Everything You’ve Ever Dreamed

    レントゲンで黒い影の映ってしまった肺をCTスキャンするために紹介状を持って東京の病院に行き、名前を呼ばれ、白い服をお召しになられた黒いブラジャーのおばはんのあとについて放射線を取り扱っている地下施設へ向かう際の、おばはんの台詞がまるで風俗嬢、「こういうとこ来るのはじめて?」。いやだなあ、緊張や恐怖や不安なんてないわけない、違う違う、あるわけある、おっろー日語は難しいなあ、つってあたふたしている僕に気を留めることなく、こちらの部屋になります、という、おばはんの目は笑っていた。 で、巨大な機械が置かれた白っこい部屋に入るとメガネのオッサンから、服を脱いで…これに…着替えてください…とローテンションで言われ、渡されたのが薄手のガウンみたいな衣服。さすが東京スキャンは神奈川レントゲンと違って粋だねえ、どうだい着替えがあるよ、襟がないのが下町風ね、ってブリーフ一枚になり、その薄ガウンを着ると丈が腰

    とある課長の断層撮影(CTスキャン) - Everything You’ve Ever Dreamed
  • 誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい上司のすべてについて - Everything You’ve Ever Dreamed

    今年の部長は不幸つづきです。父。母。弟。義父。義母。従兄弟。多くの親族が亡くなり、それを理由に会社を休んでいます。従兄弟は僕が知っているだけで四人、義理の母上様は三回は亡くなっています。複雑な家庭環境なのでしょうか。義理の母上様はゾンビなのでしょうか。 部長の家の前で大型タンクローリーが大破炎上したこともありました。部長の家の前を走る幅3メートルほどの片道一車線で、タンクローリーが大爆発して炎上、危なくて家から出られないといい、部長は会社を休んだのです。タンクローリーが燃える音なのでしょう、ジャンジャンバリバリ、遊戯施設のような雑音のする電話で部長の話を受けたのは僕ですから、昨日のことのようにおぼえています。ジャンジャンバリバリ。タンクローリーはその後も二回、爆発し、部長は二日休みました。 あるとき、親族の葬儀に参加した不幸な部長の休み明けに、心の優しい僕が気をつかって「お気の毒でしたね。

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