電通の違法残業事件に対する東京地裁の判決後、過労自殺に追い込まれた高橋まつりさんの遺影を掲げて記者会見した母、幸美さん(右)と川人博弁護士=2017年10月6日、東京・霞が関の厚生労働省 電通の新入社員が入社からわずか9カ月で命をたった自死事件が労災認定されたのは、2016年9月30日である。この労災認定を巡るニュースは、「働き方改革」として長時間労働の是正に取り組むことを目玉政策に掲げた安倍政権の方針を含め、社会に大きな影響を与えた。あれからもう1年半以上が経過したが、実際に長時間労働の是正に向けた「働き方改革」は、目に見える成果を上げていないというのが現状だろう。 むしろ、長時間労働の是正とは真っ向から反する「裁量労働制の拡大」と「高度プロフェッショナル制度(高プロ)の導入」が狙われることで、議論は混迷を深めている。 ここでは、電通過労自死事件(以下、電通事件と略記)を振り返りつつ、「