はじめに――「リベラル」は死語! 本日のセッションで私に課せられたお題は、「リベラル」の歴史や定義について、です。わたしは政治思想史を専門としていますので、その領域で「リベラル」がどう考えられているのかと、それに対する私の若干のコメントを今日はお話ししたいと思います。 まず、本題に入る前に、日本では「リベラル」と言ってもピンとくる人が少なく、しかも今日ではおそらく若者一般のあいだでその魅力がますます落ちていることに触れておきたいと思います。その理由として、大雑把に言うと次のような事情が考えられます。 ひとつは、戦後日本では長らく自民党が政権与党であり続けたわけですが、その自民党のなかにも「リベラル」と呼ばれる人びとが含まれていたため、リベラルが日本政治を語る政治機軸(哲学)にはならなかったという事情があります。 もうひとつは、冷戦体制の崩壊と〈革新対保守〉という構図の終焉が挙げられます。し