(文:内藤 順) 尼崎事件は兵庫県尼崎市を中心に複数の家族が監禁・虐待され、死へ追いやられた連続殺人事件である。 首謀者の角田美代子は、長年にわたり、様々な家族を乗っ取り、金を脅し取ったうえで、崩壊させていった。その過程では、少なくとも9人が死へ追いやられており、しかも角田美代子が直接手を下すのではなく、取り込んだ家族を意のままに操り、家族同士で暴力を振るわせ壊滅させたことが特徴とされる。 逮捕から約1年後の2012年12月12日、角田美代子は留置場で自殺した。そのため本事件の真相が永遠に解明されない可能性は高い。だがそれを、巻き込まれた一人の人物の視点へ着目することによって、この事件がどのように起こりえたのか解明しようと試みたのが、本書『尼崎事件 支配・服従の心理分析』だ。 著者は、被告人Aの弁護団から依頼され情状鑑定を引き受けた、心理学者および情報科学研究者のグループ。実際に、裁判で提
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