能とプロレスの意外な共通点 能とプロレスは正反対のように見えて、実は似ている。宮藤官九郎脚本『俺の家の話』はそのことを見事に活かした傑作ドラマだった。 両者が正反対なのは一目瞭然だろう。能が日本の格式高い伝統芸能であり人間国宝を擁するのに対して、プロレスは肉体がぶつかり合う格闘技であり大衆的なエンターテインメントだ。そして能の宗家が血縁による世襲制であるのに対して、プロレスの団体は技の継承はあっても血縁とは無関係である。 しかし両者には意外と共通点も多い。たとえば能舞台とリングはどちらも観客に囲まれた四角い空間だし、能役者とプロレスラーはそれぞれに面/覆面をつけ、作中で言われるようにどちらも体幹が重要で、そして何より、生と死にかかわるという点で共通している。 能とは夢幻能に代表されるようにしばしば亡霊が登場する、生と死をめぐる芸術である。プロレスも実は生と死にかかわる格闘技だ(『俺の家の話