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山形浩生に関するprisoneronthewaterのブックマーク (151)

  • 余談:モーレツ営業係長としてのチェ・ゲバラ、および商品としての革命 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary チェ・ゲバラのキューバ革命とそれ以降の成功と挫折は、上(カストロ) がお膳立てしたうえでのモーレツ営業係長的な成功と、そしてそれが勘違いしたまま部長になってしまい、お膳立てがなくなって思うように事態が進まなくなったときの困惑、シバキ主義とパワハラ化、一気に立て直そうとする焦り、かつての栄光を夢見ての挫折、といったプロセスで説明できるのではと思う。 そしてそこでは、その営業係長として売り込んでいた「革命」という商品の変化も効いてくる。20世紀社会主義革命は、機械化と量産による生産性向上と、その恩恵の平等な分配で万人にパンを与えるというパッケージ商品。だがもし機械化が成功しすぎてパンくらい無人でも平気で提供するようになると、そもそもの労働が不要になるために逆に合理化/機械化反対を余儀なくされ、イノベーションも否定することになり、一方で人民の「パン以外もよこせ

    余談:モーレツ営業係長としてのチェ・ゲバラ、および商品としての革命 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • リックライダー「銀河間計算機ネットワークのメンバー向けメモ」(1963) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary インターネットの生みの親の一人とされるリックライダーが全地球的、宇宙的な壮大なネットワーク構想を抱いていたという根拠としてよく持ち出される文書。ただし実際の中身は、宇宙はおろか地球全体といった話はほぼ出てこない。計算機センターの相互運用を高めるための標準化やRFC的なコンセンサスの必要性をめぐる漠然としたアイデア。言語の標準化、ネットワークのプロトコルめいたものの必要性、さらにネットワーク上のリソース共有の方法について議論しようという、会議のためのアイデアメモ。 ADVANCED RESEARCH PROJECTS AGENCY (高等研究計画局 / ARPA) Washington 25, D.C. April 23, 1963 メモ: 銀河間計算機ネットワークのメンバーおよび関係者向け Memorandum For Members and Affil

    リックライダー「銀河間計算機ネットワークのメンバー向けメモ」(1963) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • Newman ”JULIA": オーウェルの顔を長靴で踏みにじる粗悪なフェミ二次創作 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary オーウェル『一九八四』をジュリアの視点から語り直した、フェミ版『一九八四』というふれこみで出てきた小説だが、その中身はというと、実はジュリアは体制側のスパイで、下々の男たちはみんな、ジュリアにハニーポットで陥れられただけのバカでした、というもの。『一九八四』はすべて、彼女の仕組んだ猿芝居でしかなかったという原作軽侮の極致。その彼女も裏切られて愛情省で拷問を受けるが、最後にネズミをいちぎって男との格の差を示し、ビッグ・ブラザーへの憎悪を確信して、反乱軍を(一瞬で)見つけ出して囚われのビッグ・ブラザーと対面し、総攻撃に向かう。『一九八四』の世界やイデオロギー観に何も付け加えないどころか、女子をかっこよく描くためにむしろ退行した、原作に対する冒涜でしかなく三流フェミ二次創作。 Newman ”JULIA": オーウェルの顔を長で踏みにじる粗悪なフェミ二次創

    Newman ”JULIA": オーウェルの顔を長靴で踏みにじる粗悪なフェミ二次創作 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • アルセ『チェ・ゲバラ最後の真実』: ボリビアでのゲリラ戦を大量のインタビューで細かく追った良い本 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary アルセ『チェ・ゲバラ最後の真実』: チェ・ゲバラの1967年のボリビア侵略とその敗北について、大量のインタビューで追った。細かい移動、作戦行動、物資、その他いろいろな話を、生き残りや当時の軍人、地元住民などの大量のインタビューで裏付けている。手の切断、デスマスク、防腐処置の詳細まできわめて細かい。インタビューの実際の言葉をそのまま引用してくれているので、迫真性もある。巻末100ページほどは彼の伝記の簡単なおさらいになっており、特に目新しい部分はないものの、写真も豊富でこれもおもしろい。なかなかよい。 アルセ『チェ・ゲバラ最後の真実』: ボリビアでのゲリラ戦を大量のインタビューで細かく追った良い そろそろまとまったゲバラもほとんどなくなった。 チェ・ゲバラ 最後の真実 作者:レヒナルド ウスタリス アルセ武田ランダムハウスジャパンAmazon チェ

    アルセ『チェ・ゲバラ最後の真実』: ボリビアでのゲリラ戦を大量のインタビューで細かく追った良い本 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 内藤『チェ・ゲバラとキューバ革命』:単なる公式プロパガンダに基づく切手コレクション紹介 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary 内藤『チェ・ゲバラとキューバ革命』は、ゲバラの伝記的な話をすべて、公式プロパガンダでしかないと批判されているタイボIIによる伝記に頼っており、都合の悪いことが書かれていなかったり美化されたりしている。また、ゲバラが会う様々な政治家たちについて、コンゴ動乱の背景やベトナム戦争の詳細についていきなり数十ページにわたり記述が展開され、記述として焦点がしぼれておらず、読んでいて混乱する。そして「ポスタルメディアで読み解く」という郵便学の利用が売りのはずであり、切手がプロパガンダに貢献するのがポイントのはずだが、プロパガンダ (つまり実際とはちがう誇張や歪曲) についての分析はほとんどなく、単なる記念切手紹介や肖像写真がわりの切手利用にとどまり、郵便学なるものの意義がない。 チェ・ゲバラ関連は一通り目を通すという方針でいろいろ見てきた。で、この内藤陽介のがある

    内藤『チェ・ゲバラとキューバ革命』:単なる公式プロパガンダに基づく切手コレクション紹介 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • チェ・ゲバラの命乞い&愛人隠し子と「ゲバラ伝」での削除 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary アンダーソン『チェ・ゲバラ:革命的人生』はすごい伝記ではあるが、1997年の初版から2010年の増補版への改訂で、ゲバラがつかまるときに命乞いをしたという一節がなぜか削除されており、ネット上ではそれが政治的圧力によるのではと勘ぐる声もある。また、伊高の新書に出ている、彼の愛人と隠し子の話が一切触れられていない。アンダーソンの執筆当時はすでに、その話はでまわっていたし、ゲバラ未亡人アレイダ・マルチも知っていたはず。なぜ噂としても触れられていないのかは不思議ではある。 以前、アンダーソン『チェ・ゲバラ:革命的人生』(増補版、2010) を絶賛した。 cruel.hatenablog.com そしてその絶賛はいまも変わらない。チェ・ゲバラの伝記としてこれ以上のものは今のところ出ていないと思う。今後、これ以上のものが出るとすれば、ソ連の南米工作の全貌が暴かれ、

    チェ・ゲバラの命乞い&愛人隠し子と「ゲバラ伝」での削除 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • フアン・マルティン・ゲバラ(弟) 「Che, My Brother」末弟の回想記だが美化と伝聞に終始。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary 2017年に出た、かのチェ・ゲバラの、15才年下の末弟による兄の思い出……は前半だけで後半は自分の話。キューバ革命のときにまだ14才くらいなので、それ以前の兄エルネストについては (ほとんど家にいなかったこともあり) 漠然とした記憶しかない。このため他の伝記などからの伝聞だらけでオリジナルな部分は家族の思い出だけ。それもあまり詳しくなくて、弁明と美化に終始。人が絶対に知り得ないことを断言したりする。たとえば革命直後の粛清裁判で、兄は実に人道的でフェアで云々と断言するが、そんなのお客さんできてた家族にわかるわけがない。ただし巻末についた家族の写真や各種の新聞切り抜きはきわめて貴重。 Che, My Brother (English Edition) 作者:Guevara, Juan Martin,Vincent, ArmellePolityAmazon

    フアン・マルティン・ゲバラ(弟) 「Che, My Brother」末弟の回想記だが美化と伝聞に終始。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『ベルクソンとロマン主義的進化主義』:またはベルクソンなんてインチキ宗教! - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    エラン・ヴィタール。ベルクソンもおすすめしてます! 一連の『存在の大いなる連鎖』翻訳を終えたけれど、ラヴジョイ関連のツイートを検索して見てたら、哲学教師が、「ベルクソンとラヴジョイは同じ方向を向いている」という世迷い言を述べているのがあった。どこかにスクリーンショットをとったはずだけど、出てきたら貼り付けておこう。←あった。ベルクソンが存在の連鎖を終わらせた? ふーん。 でも、これはずいぶん首をかしげる話ではある。『存在の大いなる連鎖』でも、ベルクソンは単なる昔の存在の連鎖にもとづく進化論を蒸し返しているだけのヤツで、さらにはへんな悟りっぽいレトリックで人々をたぶらかしてるだけのインチキなやつ、というのは明言されている。この二人が同じほうを向いているはずは絶対ないのだ。 で、たまたままさにラヴジョイがベルクソンについて論じた講演録があったので、それを取り寄せてまずは全文をpdf化いたしまし

    ラヴジョイ『ベルクソンとロマン主義的進化主義』:またはベルクソンなんてインチキ宗教! - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はいはい、ちょっとだけ残すのもいやだったので、やってしまいましたよ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』全訳 (pdf、3.3MB) これまでずっと続けてきたラヴジョイ、これで注も含めて全訳あげました。詩とか、長々しい引用とかはあまりに面倒なので訳しておりませんが、詩は苦労してそれっぽく訳したところで、何か追加でわかるわけではないし、引用部分も決して追加情報があるわけではない。文中でラヴジョイが語ったことの裏付けでしかないので、まあ許しなさい。 cruel.hatenablog.com これで一通り訳し終わったが、もちろん内部利用用なのでみなさん勝手に読んではいけませんよ。 9章:存在の連鎖の時間化 さて残っていた第9章は、存在の大いなる連鎖の時間化、というもの。ここはそれなりにおもしろい。が、テーマは簡単。静的な存在の連鎖/充満の原理は、ライプニッツ&スピノザの章で見たように、決定論的な世

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』

    ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々のが一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

    マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はい、ラヴジョイの続き。 cruel.hatenablog.com 今回は、18世紀に、存在の大いなる連鎖が流行って、それが人間の立ち位置についての考え方に影響し、格差社会の弁明まで出てきました、という話。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 比較的中身は薄いというか、言われていることはそんなに意外ではなく、ああ、こういう考え方も出てくるかねえ。というもの。全体として、存在の位階があってそれが重要なんだから、人間は自分が特別と思うな、自分のポジションだけ守ってろ、改善しようとするな、という現状肯定イデオロギーが出てきた、ということになる。それぞれについて、いろんな詩人や評論家があれこれ言っているのを引用するけれど、ざっと見ておけばいい感じ。それが18世紀社会の維持に決定的な影響を持っていた、という感じではない。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイの続きです。 cruel.hatenablog.com 最後の第11講では、この存在の連鎖とか充満の原理、さらにその元になっている神様の異世界性とこの世性の両立が不可能だというのがあらわになって、それが一気に忘れ去られる様子が述べられていた。 cruel.hatenablog.com 今回の第10講は、その一つ手前ということで、その解体の先触れみたいなのがロマン主義として出てきたか、あるいはこの世性みたいなのが嫌われて、全然別の世界を夢想する異世界性指向みたいなのがロマン主義になったとかいう話かなー、と思っていた。 結果で言うと、ぜんぜんちがった。むしろ、存在の連鎖と充満性を強調するような働きが、18世紀ロマン主義として出てきた、というのが主旨となる。まずはお読みあれ (ってきみたち読まないのは知ってるけど)。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 啓

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    またラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の続きです。第3講。第2講で異世界性とこの世性/存在の連鎖の発端を説明し、4講でそれが天文学でいろいろ応用されたので、その二つの間の中世の話で、何かその天文学の前段にあたるひねりがあるかも、というのが期待だった。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com が、残念ながらそんなおもしろい章ではなかった。第2章で説明された、人間には及びもつかない自足した完全な神様という話(異世界性) が中世神学の基教義だったんだけれど、じゃあなぜこの世はこんなダメなの、もっといい世界を神様は作れなかったの、神様無能やーいやーい、という批判に対して、「そんなことないやい、この世は最高の完璧なんだい!」という話をこじつけるには、充満の原理を持ち出さざるを得なくなり、トマス・アクィナスなどえらい人も右往左往して屁理屈こねてた、という話。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はい、ひまつぶしにラヴジョイの続きですよ。前は天文学だったけれど、今回は生物学です。個人的にはオリバー君の話につながるのが楽しかったが、もうオリバー君なんて知らないよな、みんな。 cruel.hatenablog.com 今回の話はとても簡単。18世紀になって、博物学ができていろんな人間や動物が観察されるようになると、生物種とかいうかっちりした分類ってウソじゃね? 細かく探せば間のもの、つまりミッシングリンクがたくさんが出てくるだろ、という話が有力に思えてきた。さらに顕微鏡ができると、これまで何もないと思っていたところにも微生物がウヨウヨしてるよねー、あらゆるところに生命が充満してるじゃないの、ほら充満の原理は正しいんじゃない? という話が出てきた、ということです。 翻訳は以下にあります。 ラブジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 そしてものぐさな読者のみなさんのために、パワ

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    しかし、考えて見りゃラブジョイは40%くらいやったんだよな。そろそろ「ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ」とかできそうだわな。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com 改訳じゃないけどソローのやつとかクルーグマンとか新規で入れてもいいかも。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com 為替のヤツもあるのよね。 クルーグマン「為替レートはなぜこんなに変わりやすいのか」 もちろんケインズもいろいろあるし、なんかうまく使えばできそうに思うんだが。いまどき読む人がいるかどうかもわからないサマセット・モームなんてのもねー。これは著作権が2015年で切れたから、その後の延長は適用されてないはず。(追記:待てよ、1930年だから戦時加算があるのか。すると切れてないのか?

    ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はいはい、やめようかなと思っていたラヴジョイですが、第2講で舞台設定ができて、第11講でいきなり結論になってしまうのは、ちょっとつまらない。その途中でどんな具合で論が進むかをみるために、多少は土地勘のある (他の部分よりは:スピノザやライプニッツは、そんなに読んでないよー) 宇宙論のところをやってみました……がその前に少しおさらいから。 cruel.hatenablog.com 前置き:「異世界性」と「この世性」のおさらい 第2講では、書で扱う主な観念の源である、「異世界性」と「この世性」というのが示された。これはどっちも、神さまの位置づけの話。 異世界性ってのは、神さまの世界はぼくたちなんかの及びもつかないまったくの別世界だ、という話だった。神さまはスーパーえらいし、人間なんかの想像力なんかとても及ばないパワーもあるし能力もあるし神さまですから、もちろん善の親玉。その世界は隔絶し、完璧

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学と三つの原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    お待ちかね (だれも待ってないか) 『存在の大いなる連鎖』第2講の翻訳。 まずは、暇な人は訳をごらんあれ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学における観念の創成:三つの原理 みんな読まないだろうからあらすじを。 前回の第1講は、そもそも観念史って何をする学問なの? という疑問に答えたものだった。 cruel.hatenablog.com 今回は、このシリーズで実際に扱う「観念」を紹介する。具体的には次の3つの原理となる。 充満の原理 連続性の原理 段階性の原理 プラトンが『国家』『ティマイオス』で、神さまというのはすんげえ隔絶したえらい絶対永遠真実完全な存在なんだぜ、この世なんか相手にしないほどすごいぜ (異世界性)、と言っておきつつ、じゃあなんでその神さまはこんな世界作ったりしたんだよ、なぜそんなえらい神さまがつくった世界に悪があり、苦しみがあるんだよ、というのに答えね

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学と三つの原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    昨日、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講を見て、その滅多斬りぶりがスゲえという話をした。 cruel.hatenablog.com 一晩寝ると、なおさらすごいな、と思う。ふつう、ここまでやらないと思うのだ。普通はどうするだろうか? なんとかポジティブに終えたいと思ってしまうのが人情だろう。そしてその簡単な手はすぐに思いつく。まず、最終回の題名を変えよう。 「現代に生きる存在の連鎖」 とかいうタイトルにしましょう。そして、全体の話の構成はこんな具合にしよう。 (ヤコービが〜、シェリングが〜、で、全部破綻しましたという話) 確かに、こうした神学や哲学の分野においてはこの観念は破綻し消えた。 しかしそれは偉大な敗北、豊穣で多産な破綻だったんだ。 だって、世界に一貫した合理性があるという確信は現代科学に受けつがれたんだ! さらにベルグソンやホワイトヘッドみたいな現代の人々にも影響は見られる。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげてしまいました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第11講 (最終回) もちろん、このpdfを読むとそれなりにウダウダしい。だが、そこで言われていることは、第1講と同じでとてもシンプルではある。それはつまり、以下の通り: 「存在の連鎖」という観念は最終的に、二千年かけて詰めていったらボロボロでまったく整合性がないことが明らかになった。 だから破綻して、すると一気に忘れられてしまった。 思想そのものの現代的な価値はまったくない。 ただこういう変なものにハマる精神の働き (すでに蒸し返すバカも出てる) の記録という意味はあるかも。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • クルーグマン『経済発展と産業立地の理論』の改訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    数日前に、なぜだか知らないがアーサー・ラブジョイのを訳し始めた話は書いた。 cruel.hatenablog.com で、それとまったく関係なしにやりはじめちゃったのが、このクルーグマンのだ。 で、訳文がこれ。 クルーグマン『開発、地理、経済理論』(3章はまだ途中全部やっちゃいました) もちろん著作権というものがあるので、クリックして読んだりしてはいけないよ。 なんでこんなのやってるのか? おもしろいから。これは1990年代の前半、クルーグマンが最もおもしろくて天才的なひらめきを次々に発揮していた時期の話だ。そしてそこのテーマは、開発経済学と経済地理学。まあぼくがやらんでだれがやる、というようなではある。 とはいえ、こうした分野そのものの中身に切り込んだというよりは、なぜこういう分野が1950年以降イマイチぱっとしなかったのか、という話ではある。そして答は簡単。どっちも収穫逓増がとっ

    クルーグマン『経済発展と産業立地の理論』の改訳 - 山形浩生の「経済のトリセツ」