黙々とバットを振り、感覚を取り戻したファームでの日々 中村剛也の本塁打は美しい。 放物線を描き時間をかけてスタンドへ届く弾道。 その瞬間、時間が止まったようにすら感じさせてくれる。 球界を代表する長距離打者がさらに大きくなって帰ってきた。 ――― 5月16日。リーグ首位をひた走る西武1軍は、東京ドームでの日本ハムとのホーム試合を控えていた。空調の効いた快適な屋内球場、チーム状態もあるのか気持ち良さそうに誰もがボールを追いかけていた。同じ時間、中村剛也は横浜との2軍戦のため、横須賀スタジアムにいた。梅雨の空気感もあるが夏のような陽射しが照りつける海の近くの2軍施設。年齢も一回り違う若手選手に混じって、額から大粒の汗を流しながら懸命にバットを振っていた。 チーム不動の4番打者。特にアジア制覇を成し遂げた08年には本塁打を量産。「おかわりくん」の愛称が広く定着した。プロ入り以来6度の本塁打王、3