ロシアと日本がソ連時代から六十年以上続けてきた北方領土交渉が重大な岐路に立たされている。安倍晋三首相が交渉の基盤を日ソ共同宣言に限定し、エリツィン政権時に北方四島を対象にした帰属交渉を行うと合意した一九九三年の「東京宣言」は脇に追いやられた。東京宣言の「死文化」を執拗(しつよう)に図ってきたプーチン政権の強硬な対日戦略が功を奏した格好だ。 日本は大きな譲歩を行ったが領土割譲に対するプーチン氏の見解は厳しい。このままでは、日本が北方領土の93%を占める択捉、国後を対象とした領土交渉を求める根拠を失うばかりか、二島返還すら実現しないという最悪の事態に陥りかねない。 プーチン政権の対日戦略の要諦は、九〇年代のエリツィン政権の対日政策を負の遺産とみなし完全に清算することだった。エリツィン氏は北方領土問題はスターリンの領土拡張主義に起因するとしてソ連時代の硬直した歴史認識から転換した。この発想に基づ
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