宇宙飛行士の食事の要である「宇宙食」は、厳しい条件の数々をクリアした限られた食品に限定されます。半世紀以上に渡る宇宙開発の歴史では宇宙食の改善も進みましたが、それでもまだ課題はあります。 例えば、アメリカの有人宇宙ミッションで食品貯蔵用の冷蔵庫が設置された例は1970年代の宇宙ステーション「スカイラブ」だけであり、大半のミッションで冷蔵庫は使用されていません。そのため宇宙食は室温で保管できるような形に加工された上で無菌状態で密封されますが、このような形態の食品は長期保管で栄養成分や食感などの品質が劣化する恐れがあります。また、これまでの有人宇宙ミッションは短期間で終了するか、補給のしやすい地球低軌道で行われてきたため、宇宙食の補給は地上からの輸送に頼っています。 【▲ 図1: 長期宇宙ミッションで摂取が推奨される1日の栄養素。過ごす環境の違いから、推奨摂取量は地上にいる人向けのものとは異な