世界中で蔓延(まんえん)を繰り返した梅毒は、治療薬ペニシリンの開発で、“過去の病気”とみられてきたが、昨年まで3年連続で患者数が増加。現在の統計方法になった平成12年以降、初めて1000人を突破した。ベートーベンやニーチェが苦しんだころは、売春婦が病気を媒介し、男から女へ、女から男へと患者を広げていた。しかし、最近は事情が違うという。日本性感染症学会評議員で、「宮本町中央診療所」の尾上泰彦院長が言う。 「梅毒は男性同性愛者に多く、患者は8割が男性で、特に30代くらいまでの比較的若い人に目立ちます。男性同性愛者に多いのは、アナルセックスが原因。アナルセックスは、肛門の締め付けが膣より強く、ペニスにキズがつきやすい。その傷口から梅毒の細菌が感染しやすいのです。また、30代くらいまでは、恋愛感情が盛んで、交際が終わっても新しいパートナーを求めたがる。晴れてパートナーができると、相手に梅毒を感染