この連載「イスタンブル便り」では、25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わりのなかで実際に経験した、心温まる話、はっとする話、ほろりとする話など。今回は、イスタンブルの旧市街で楽しむシリア人街の食文化についてです。 >>>バックナンバーから読む「先生、僕の彼女、フーディー(食べることが大好きな人。グルメとは違う日常的な食に関心が高い人のこと)なんです」。 授業の合間にそう言って、<すごく美味しいシリア料理>を勧められた。さる私立大学で助教を務めながらインダストリアル・デザインの博士課程に通うバライダは、流行に敏感で、レストランに詳しい。ある日、体調を壊したと言って授業を急に休んだので心配していたら、翌週出てきてこう言った。 「先週僕の誕生日だったんですけ