53 政軍関係から見た米軍高級幹部の解任事例 ――マッカーサーからマクリスタルまで―― 菊地 茂雄 〈要 旨〉 米国の大統領には、行政権の一部として、他の高級公務員と同様に軍の高級幹部を解任 する無制限の権限があるが、それを行使するのはコストが高くつき得る。従って、冷戦期 には、各軍の参謀総長の任期を短く設定して更新の対象とし、任期を更新しないことによ り政権の意に沿わない参謀総長を事実上解任するということが行われていた。また、大統 領が軍幹部を栄転の形を取って事実上解任した例もある。いずれも、明示的に解任した場 合の政治的コストを回避する手段であった。 ただし、ゲーツ国防長官の下で行われた軍高級幹部の解任は、冷戦期に行われた事実上 の解任の事例とは性格を異にする。まず、ゲーツは、解任であったこと、さらにそれが自 身の判断によるものであることを明らかにしている。さらに、解任の理由も、むしろ