魔法の言葉で楽しい仲間がポポポポーン――。東日本大震災の発生直後、こんなフレーズに合わせアニメの動物が現れるテレビCMが大量に流れたことを記憶している人は多いのではないか。企業のCM自粛に伴い、公益社団法人「ACジャパン」(旧公共広告機構)のあいさつ励行キャンペーンCMが急きょ流されることになり、老若男女が口ずさむなど社会現象になった。震災から9年半。歌を担当した東京都立川市の音楽家、松本野々歩(ののほ)さん(37)は、震災直後の放送に賛否もあったが、「音楽と向き合う意味を考え直す原点になった歌」と振り返る。 このCMのタイトルは「あいさつの魔法。」。ACによると、小学校低学年までを対象にした2010年度の全国キャンペーン作品だった。子供があいさつをするたびに、動物が現れて友達になっていく様子を歌とアニメで表現している。 CM放送は10年7月から始まり、震災発生後、多くの企業がCM放送を自